Oracleは新たに買収したSun Microsystemsの統合計画を策定しているが、この合併によってデータベース分野で最大の影響を受ける2社のライバルベンダーがIBMとMicrosoftだ。
Oracleはこの買収に伴い、MySQLを手中に収めた。同データベースはこの数年、Web2.0を活用する企業向けのソリューションとして人気が高まっている。買収が完了した今、OracleではMySQLを堅持するだけでなく、その販売、マーケティング、開発の取り組みを強化する方針だとしている。
これは、データベース分野でOracleの最大の競合企業であるIBMとMicrosoftにとって何を意味するのだろうか。IBMの場合、その答えは「たいした影響はない」ということらしい。
「IBMは当社のデータベース製品全体を通じてシームレスな移行パスを顧客に提供している。DB2 Express-Cのコードベースも同じだからだ」と話すのは、IBMで製品戦略ディレクターを務めるバーニー・スパング氏だ。「これに対し、MySQLのユーザーが本格的なエンタープライズ機能を備えた製品にステップアップしたいと考えた場合、コードベースが異なるOracle Databaseに移行しなくてはならない。DB2の場合は、そういった面倒な移行の必要はない」
「MySQLのユーザーは、移行に際してライセンスを購入するだけでなく、MySQLからデータを読み出して、それをOracle Databaseに取り込み、さらにアプリケーションをMySQLからOracle Databaseに移植しなければならない」とスパング氏は話す。「DB2 Express-Cを運用している顧客の場合は、ライセンス料を支払ってインストーラを起動すれば終わりだ。アプリケーションはまったく同じものが使え、データを移動する必要もない」
Microsoftは、OracleのSun買収が自社の戦略にどんな影響を与えるのかという疑問には答えていない。しかし米調査会社Forrester Researchのアナリスト、ノエル・ユーハンナ氏によると、OracleがMySQLを利用してデータベース市場のローエンド部分に挑戦してくるのをMicrosoftは心配しているはずだと指摘する。
「MicrosoftがMySQLとJavaに対して不安を抱いているのは間違いない」とユーハンナ氏は話す。「MySQLはローエンドからミッドレンジのデータベースとして非常に人気が高くなった。この分野はMicrosoftが長年にわたって支配してきた領域だ。MySQLプラスOracleという組み合わせは、データベース市場の最もローエンドから最もハイエンドまでカバーできる」
「加えて、Javaと.NETの戦いも長年にわたって続いている。Microsoftは.NETとMicrosoft SQL Serverとの連係によってユーザーに訴求しようとしてきたのに対し、JavaとDBMS(データベース管理システム)との連係はそれほど緊密なものではなかった。だが今回の買収でそれが可能になる」とユーハンナ氏は付け加える。「一方、IBMにとって大きな脅威となるのは、SunがOracleと結合することだ。というのも、SunのハードウェアはIBMとHewlett-Packard(HP)にシェアを奪われ続けてきたが、Oracleがうまくやれば大きな脅威になる可能性があるからだ」
米調査会社The 451 Groupのアナリスト、マット・アスレット氏によると、OracleはMySQLを所有することで、IBMとMicrosoftを2つの戦線で攻撃する機会を手に入れるという。Oracle Databaseでエンタープライズアプリケーション分野を狙い、MySQLでWebアプリケーションと部門用アプリケーションの分野を狙うというわけだ。
「IBMとMicrosoftは、これに対抗するのが非常に難しい。特にWeb分野では、MySQLに直接競合する成熟した製品がないからだ」とアスレット氏は指摘する。「予想される対抗策としては、MariaDBのサポートを強化することが挙げられる。だがこれは、商業的には魅力的だが戦略的には問題が多い。魅力的な選択肢となるWeb対応・分散型データ管理技術が次々と登場しているからだ。IBMとMicrosoftはこれらの技術を検討し、クラウドデータベースとしての可能性を探るものと予想される」
もちろん、この分野をめぐる今後の展開は、Oracleがいかに実行できるのかに懸かっている。The 451 Groupが2009年12月に公表した調査結果によると、MySQLユーザーの14.4%は「MySQLがOracleに獲得された場合は、それを使い続ける可能性は低い」と答えている。
「Oracleにとって最大の課題は、Oracle DatabaseとMySQLの販売チームを分離したままで、両チームの意欲をかき立てながらも競合を避けることだ。もう1つの課題は、MySQLの開発プロセスに活気を吹き込むことだ。有能な開発者の喪失、そして買収手続きの遅れによる開発の停滞の埋め合わせをしなければならないのだ」とアスレット氏は語る。
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