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人とロボットの共存社会を仮想空間でシミュレート NIIがプラットフォーム公開

» 2010年03月24日 15時36分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 国立情報学研究所(NII)は3月24日、ロボットの行動をシミュレートするための仮想空間プラットフォーム「SIGVerse」(シグバース)を開発したと発表した。物理シミュレーションと社会的認知シミュレーション環境を統合し、実社会に近い環境でのシミュレーションが可能。研究者は、自分で組んだロボットプログラムを仮想空間上で動かし、動作を検証できる。

 オープンソースのシミュレータライブラリ「Open Dynamics Engine」を活用した物理・力学シミュレーション環境と、ロボットの視野にある物体を検出したり、視線情報を管理する仕組み、音声の伝わり方をシミュレートする環境を統合した「世界初」(NIIの稲邑哲也教授)の統合プラットフォーム

 サーバと専用ソフト(Windows用)を研究者に無償で提供。研究者は、C++で書いたロボットプログラムを仮想空間上で動かし、動作を検証できる。ロボットと人間が操作するアバターを共存させたり、別の研究者が作った複数のロボットを同じ空間上で同時に動かすことも可能。アイコンタクトを伴う対話や、口コミでの情報伝達、ロボットチームのサッカー試合のシミュレーションなど、さまざまな研究に応用できる。

 デモでは、プログラム制御のロボットと人間のアバターが協調しながらお好み焼きを焼く様子を披露した。ロボットの指示に従い、人間が油をひいたりお好み焼きをひっくり返すなどの作業をすると、ロボットは人間の作業を見ながら次の指示をし、人間が作業をしなければ、ロボットが自ら作業する――といった協調が行われていた。


画像 お好み焼きを焼くデモ
画像 応用の可能性は幅広い

 人とロボットの共存社会に向け、実環境に近いシミュレーションプラットフォームを提供することで、人間やロボットの原理に迫ることが狙い。SF作家の瀬名秀明さんや、「攻殻機動隊S.A.C」脚本を手掛けたアニメ脚本家の櫻井圭紀さん(プロダクションI.G)などが参加する「社会的知能発生学研究会」で開発。認知科学、脳科学、複雑系、発達心理、機械学習、文化進化などさまざまな分野の研究に貢献できるとしている。

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