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» 2010年07月07日 14時15分 UPDATE

参院選、ベンチャー経営者も政治の世界へ挑戦 ITスキルや経営経験で改革目指す

11日投票の参院選では、IT関連などのベンチャー企業経営を経験した候補者が目立っている。企業経営を通じて身に付けたノウハウと規律を政治の世界に持ち込み、変革にチャレンジしている。

[高杉貴,ITmedia]

 7月11日に投開票日を迎える第22回参議院選挙。中盤を過ぎた選挙戦で、消費税増税あるいは民主党の議席数そのものが争点と言われる中、今回の選挙には従来にない側面がある。候補者にIT(情報技術)関連などのベンチャー企業経営者が目立つ。近年、地方の首長も含めて企業経営を通じて身に付けたノウハウと規律を政治の世界に持ち込み、沈滞する日本を経済中心に建て直す。

photo 応援に駆け付けた楽天の三木谷浩史会長兼社長(右)と同社執行役員から立候補した小林司氏(7月3日、埼玉県川口市のJR川口駅前)

 7月3日午後7時半過ぎ、埼玉県川口市のJR川口駅前。休日を楽しんだ老若男女が行き交うなか、マイクを手にひときわ大きな声で街頭演説する男性がいた。三木谷浩史・楽天会長兼社長である。「いっしょに楽天を大きくしてきた小林君をよろしくお願いします」と、傍らに立つみんなの党の候補者、小林司氏への投票を呼び掛けていた。拡声器が使える午後8時を過ぎてもなお、聴衆の1人1人に握手して回り、求められれば写真撮影にも応じた。

 川口市出身の小林氏は楽天の執行役員から国政への転身を目指し、立候補した。楽天では10年あまりを過ごし、小規模なベンチャー企業から現在の規模に成長するのに貢献した。プロ野球参入に尽力し、球場のネーミングライツ導入などアイデアマンぶりも発揮したという。

 街頭演説で小林氏は、「ITの可能性を信じて電通からベンチャーの楽天に転じた。みんなの党は小規模だが、基本政策が自分の考えと一致する。ITを生かして、政治を効率化し、経済を成長させたい」などと述べていた。失われた20年とも言われるほど低迷を続ける日本経済を再生する意気込みだ。

 今回、起業家や経営者を擁立しているのは主として、みんなの党。同党はテレビCMなどで、消費税増税の前にやるべきことがあるとして、「公務員削減」などを訴えている。渡辺喜美代表は「お金の倹約や経済成長の大切さを分かっている経営者に国会にきてもらいたい」と話す。

photo ネクステック元社長の山田太郎氏は、公示日の遊説場所のひとつに、経営者としてもよく通ったイベントが開催されていた東京ビッグサイトを選んだ(6月24日、東京・江東の国際展示場駅前)

 その考えに共鳴して立候補しているのはほかに、IT支援のネクステック社長だった山田太郎氏、伊勢丹のカリスマバイヤーを経て福助社長を務めた藤巻幸夫氏、そして、タリーズコーヒージャパン創業者で、その後シンガポールでも事業を立ち上げた松田公太氏。経営者ならではの現状への危機感が彼らを駆り立てた。

 中でも、松田公太氏はベンチャー経営者仲間から盛んに応援を受けている。6月9日、東京・代々木。参議院選挙の公示を間近に控え、松田氏陣営は初めての大規模な講演会を開いた。ゲストとして参加したのは、こちらでも楽天会長兼社長の三木谷氏だ。

photo 楽天の三木谷浩史会長兼社長や堀江貴文・元ライブドア社長らITベンチャー経営者多数から支援を受けるタリーズコーヒージャパン創業者の松田公太氏(右)。渡辺喜美・みんなの党代表らと公示日に街頭演説(6月24日、東京・新宿の新宿駅西口)

 「国内外で創業した経験を生かして、日本経済を国際競争力のあるものに再生したい」。松田氏は、立候補の理由をこう語った。かねて、日本経済の地盤沈下を心配する三木谷氏は、昨年来問題視している医薬品のネット販売規制問題を引き合いに出し、「政治から変えるしかない」と、松田氏の挑戦にエールを送っていた。

 三木谷氏以外にも支援の輪は広がっている。事務所開きには、ホリエモンこと堀江貴文・元ライブドア社長らIT系ベンチャー経営者も多数駆けつけ、7月5日に開いた松田氏の集会には、堀江氏が応援演説に訪れた。自分自身が出馬したときの経験を踏まえ、「ミニ集会やってる?。演説は3分で言いたいことを伝えなきゃ」などと具体的にアドバイスしていた。

 また、この日、松田陣営が配布していた、団扇代わりにも使える円形の選挙ビラは、「藤田(晋サイバーエージェント社長)さんの厚意」(松田氏)で、アメーバピグのキャラクターがコーヒーショップに集まったデザインになっていた。

photophoto 集会の応援に堀江氏登場。選挙ビラにはアメーバピグが

 IT・ネット系のベンチャー経営者は今回の選挙から急に政界を目指すようになったわけではない。昨年の衆議院選挙で、東京4区で初当選した藤田憲彦氏(民主党)は、中高年向けコミュニティサービスの小僧com(東京・千代田)の創業者だ。

 地方政界に目を転じると、昨年11月には、ADSL大手だったアッカ・ネットワークスの副社長を務めた湯崎英彦氏が新人5人の戦いを制し、広島県知事に初当選した。知事選のマニフェスト(選挙公約)には、地域で新技術などに投資するファンド導入を挙げていた。ベンチャー流の政策のひとつといえる。同年10月の神戸市長選にはサイト制作のアイ・エム・ジェイ(IMJ)前社長である樫野孝人氏が挑戦した。残念ながら落選したものの、次回を目指して準備中だ。

 ベンチャー経営者の政界進出というと、ライブドア社長だった堀江氏が出馬した2005年9月の衆院選を思い出すかもしれない。しかし、今の流れの源流はさらにさかのぼり、2001年にたどり着く。当時、参院選を控え、「『インターネット・デモクラシー(民主主義)』を実現しよう」との機運が高まり、デジタルガレージ共同創業者の伊藤穣一氏やGMOインターネット社長の熊谷正寿氏、インフォシークの中村隆夫会長らIT・ネット関連ベンチャー経営者が結集した。連動して、当時ネットのコミュニティーを運営していたガーラ会長の村本理恵子氏が小沢一郎氏の自由党から出馬した。

 2005年には、ベンチャーキャピタルや社会人大学院などを運営するグロービス代表の堀義人氏らが中心になって200人ものベンチャー経営者らが発起人となったYESプロジェクトが発足した。「若者を中心に投票率を上げよう」という名目だったが、堀江氏の出馬もあり、ベンチャー経営者と政治の距離が近づいた。今年6月14日に、開催されたイベントには、松田氏も登場し、堀氏らから応援の言葉をかけられていた。

 起業家は新しい事業を創造するのが仕事。新分野に挑戦するがゆえに、政府による規制や既得権益を持つ旧体制と衝突することも少なくない。打開するためには政治を変えるしかないとの思いに至り、政界に向かっている。創業と経営を革新してきた経験を生かして、政治を変革する挑戦に期待したい。

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