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孫社長「光の道」新提案、アクセス回線会社に出資 NTTに再反論

» 2010年10月25日 20時55分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 ソフトバンクの孫正義社長は10月25日、2015年までに国内全世帯で光回線など超高速ブロードバンドの100%普及を目指す政府の「光の道」構想についての意見を披露する記者会見を開き、同日片山善博総務相に報告したという内容について説明した。

 新たに、NTT東西のアクセス回線を分社化し、新会社にソフトバンクなど各社と政府が共同出資するアイデアを提案。以前の案に対してNTT東西から受けた反論については、一部を受け入れつつも再反論し、主張の大枠は変えなかった。

「NTTタダ乗りやめろと言われ、グサっと刺さった」ので……

 孫社長は従来から、NTT東西のアクセス回線を別会社に切り離した上で、メタル線(電話線)を全廃し、一気に光回線に入れ替えることを提案。「税金を使わず一気に光化できる上、NTT東西は赤字部門を切り離せる」「回線は、メタル線と同じ月額1400円で提供でき、アクセス回線会社も利益を出せる」などと主張していた。

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 新提案は、分社化したアクセス回線会社に、ソフトバンクを含む各社や政府で合計5000億円分増資するというもの。出資比率の例として、政府がNTT株式で2000億円を現物出資、ソフトバンクとKDDI、NTT東西が1000億円ずつ負担するという案を示した。新会社は、NTT東西の負債のうち約半分となる1兆円も引き受けて弁済するという。

 新会社への出資を提案したのは、「Twitterなどで『NTTタダ乗りはやめろ』と言われ、グサっと胸に刺さった」ため。「ソフトバンク単独で増資分の5000億円すべてを出す覚悟もあるが、我田引水や独占と言われても困るので」、他社や政府と共同で出資することを提案したという。

 この構想が実現すれば、「ソフトバンクは光ブロードバンド接続を月額1150円で提供することをコミットしたい」という。電話回線のみ利用する場合は、月額回線料1400円+電話料金300円=1700円で、光回線も利用するユーザーはこれに光回線利用料(1150円)を足した2850円で光ブロードバンドを利用でき、「ADSLの時と同様、世界一安い、世界一高速な光ファイバーを日本国民誰にでも提供できる」と話す。

「債務超過にはならない」 NTTの主張に反論

 「税金を使わずに光化でき、アクセス回線会社も利益を出せる」という孫社長の従来からの主張に対しては、NTTグループが具体的に数字を挙げ、「実現不可能」と反論していた。孫社長は反論について一部を受け入れたものの、一部については再反論して試算を更新。主張の大枠は変えなかった。

 例えば、NTT側の新資料の提示により、架空配線の未整備区間が従来より多かったことが判明したとしって、その敷設費として約5731億円の費用を追加計上した一方、メタル回線を一括償却することで、新会社が債務超過に陥るという指摘に対しては、「NTTの2008年度のバランスシートの数字を使うとそうだが、09年度だと約2000億円の純資産が残り、債務超過にならない」と反論した。

 顧客管理などサービスに関わるコストが過少に見積もられているという指摘に対しては、「NTTはNTTの実績から試算しているが、効率化しているソフトバンクの実績だともっと少なくて済む」と再反論し、追加計上は見送った。

 試算し直した結果、アクセス回線会社の営業利益は3500億円から2300億円、フリーキャッシュフローは4600億円から3800億円に減ったものの、「光100%を税金ゼロで実現できるという結論は変わらない」とした。


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 孫社長は、国民のものである通信回線をもう一度国民の手に戻し、光100%を実現することが景気回復と日本の未来につながると力説。「もう一度競争力を取り戻そうじゃないですか。薩摩も長州もない。21世紀に必要なのは情報の道」と熱弁を振るった。

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