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KDDI・田中社長が掲げる「3M戦略」

» 2011年04月25日 18時57分 公開
[ITmedia]

 2011年度は「KDDIの次なる成長に向けたスタートの年だ」──KDDIの田中孝司社長は、就任後初の新年度となる11年度をそう位置付ける。短期的にはauの勢い回復と初の黒字化を達成した固定事業の増収増益を目指しつつ、中期的には「3M戦略」を掲げ、複数のネットワークを持つ強みを生かした収益モデルへの転換を進めていく。

 「もう一度、みんなが期待できるauに」と昨年12月に就任した田中社長は11年度、auの勢い回復に向けた経営指標として(1)解約率、(2)MNP(番号ポータビリティ)、(3)純増シェア、(4)データARPU──を重視する。転出超が続いているMNPや、ソフトバンクモバイル、ドコモに次ぐ3位にとどまる純増シェアの改善に向け、スマートフォンへのシフトを強化。11年度のスマートフォン販売は前年度から4倍近い400万台に引き上げ、データARPUは9.5%増の2540円と音声ARPUを逆転する見通しだ(KDDI、11年度はスマートフォン400万台販売へ 5月の発表会は予定通り実施)。

photophotophoto スマートフォン効果でデータARPUが拡大=決算説明会資料より
photo 3M戦略

 中期的には、国内事業の軸に「3M戦略」を据える。(1)マルチユース、(2)マルチネットワーク、(3)マルチデバイス──の3つで、さまざまなコンテンツを最適なネットワークを介してスマートフォンやフィーチャーフォン、タブレット、PCなど多彩な端末で利用できる環境を構築。これまでは各事業・サービスごとに縦割りだったが、個人・世帯をベースにシームレスに組み合わせていくことで売り上げを最大化していく狙いだ。

 田中社長によると、「KDDIの競争力の源泉」となるのがマルチネットワークだ。従来は宅内や駅前などでもビット単価の高い3Gネットワークでカバーしてきたが、今後は3Gをベースに宅内の高トラフィックには安価なWi-Fiで、モバイルの高速ニーズにはWiMAXで対応するなど、増大する一方のデータトラフィックをマルチネットワーク化で分散しながら収容していく。auの3G、固定(FTTH)、UQ WiMAX、J:COMのCATVをサービスメニューに持つKDDIならではの強みであり、バックボーン共有化で運用コスト低減も図る。

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 マルチネットワーク化で高速通信ニーズとビット単価の低減を進めながらネットワーク運用コストを下げ、売り上げ増とコスト削減をそれぞれ進めていく戦略だ。田中社長は「適切なネットワークを組み合わせてコストを下げていくのがマルチネットワークであり、KDDIグループにしかできないと考えている」と話す。

 LTEの展開計画に変更はないが、マルチネットワーク化でトラフィック分散を図ることで、基地局などLTE関連の設備投資額(15年までの合計)を従来計画の5150億円から3000億円に抑制する方針だ。

固定事業が初の黒字化

 2010年度(11年3月期)の連結決算は、営業利益が前年度比6.3%増の4719億円となり、10年連続の増益を達成した。

 売上高に当たる営業収益は横ばいの3兆4345億円。携帯電話事業が2.2%減の2兆5907億円だったが、固定通信事業が6.9%増の8973億円となり、携帯事業の減収を補った。

 携帯事業の営業利益は9.3%減の4389億円にとどまったものの、固定事業が240億円の黒字(前年度から682億円改善)となったことで増益を確保した。経常利益は4.2%増の4407億円、最終利益は19.9%増の2551億円だった。

 11年度(12年3月期)の営業利益はほぼ横ばいの4750億円を見込む。携帯事業は2.0%減の4300億円と予想しているが、固定で66.7%増の400億円を見込んでいる。

 東京電力による保有株式の売却については「直接打診を受けたことはない」(田中社長)という。ただ、東電の勝俣恒久会長はKDDI取締役を6月で退任する。「復旧に集中したい」と申し出があったという。

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