ITmedia NEWS > ネットの話題 >

「AC45sへの変更は日本に有利」──ソフトバンク、第35回アメリカズカップ参戦を表明白戸家のお父さんがヘッドセールではねる!

» 2015年04月30日 17時01分 公開
[長浜和也ITmedia]

AC45sでゆれる第35回アメリカズカップに日本参戦

 ソフトバンクは、4月30日に関西ヨットクラブが主体となって設立する「ソフトバンク・チーム・ジャパン」を支援して、第35回アメリカズカップに挑戦することを発表した。日本のヨットクラブとしては2000年のニッポンチャレンジ以来、15年ぶりのアメリカズカップ参戦になる。

ソフトバンク・チーム・ジャパンのデザイン。黒主体にソフトバンクの“銀二引”をあしらう

 第35回アメリカズカップは2017年に英領バミューダ諸島で行う予定だ。それに先立ち、第34回のアメリカズカップに勝利したオラクルチームUSAに挑む挑戦チームを選出する「アメリカズカップ・ワールド・シリーズ」が2015年7月下旬の英国ポーツマスから始まる。アメリカズカップ・ワールド・シリーズは、2015年から2016年にかけて6回以上のレースを行い、その順位に従ってポイントをためていく。

 このワールドシリーズのポイントを持ち点としたアメリカズカップ予選シリーズが2017年から始まり、上位4チームのアメリカズカップ挑戦者プレーオフで優勝したヨットクラブが、“やっと”第35回アメリカズカップで前回優勝したオラクルチームUSAと戦うことになる。

 ソフトバンク・チーム・ジャパンの総監督にはニッポンチャレンジにクルーとして参戦し、その後も、ピザーラセーリングチームなどで世界のレースを長年にわたって戦ってきた早福和彦氏が就任した。早福氏はすでに2015年1月から総監督としての活動を開始しているという。ニッポンチャレンジは活動拠点を愛知県の蒲郡に設けていたが、ソフトバンク・チーム・ジャパンは拠点をアメリカズカップを行う英領バミューダ諸島に構える予定だ。

ソフトバンク・チーム・ジャパンの総監督に就任した早福和彦氏。日本人では少ないプロレーシングセーラーとしてアメリカズカップをはじめとする世界のレースで戦ってきた

 早福氏は、ソフトバンク・チーム・ジャパンが7月下旬のアメリカズカップ・ワールド・シリーズ ポーツマス戦から参加する予定で、すでに、ソフトバンク・チーム・ジャパンの選手(クルー)は、即戦力を重視して外国人を中心にAC45sの定員となる5名を確定していることを明らかにした(前哨戦となる5月のウォームアップレガッタには言及せず)。ただ、今後は日本の若いヨット乗りを対象に全国で広くクルーを探してみたいという考えも示した。なお、艇長(スキッパー)については、第35回アメリカズカップへの参加が承認されていない現時点で公表できないとしている。

ヘッドセールに“はねるお父さん犬”が。オラクルチームUSAのヘッドセールにあった“PUMA”のパロディかと思いきや、正式なもので「アメリカズカップ・ワールド・シリーズ」初戦のポーツマス大会にはこのデザインで参戦するという

開発時間と建造コストを抑制できるAC45sだから日本有利に?

 日本では、過去に1992年と1996年、2000年の3回にわたってアメリカズカップに挑戦してきたが、資金不足でその後活動が途絶えてしまった。この資金問題について早福氏は、第35回アメリカズカップで本戦に使用する艇が、2015年3月に急きょ「AC45s級」に変更されたことを取り上げている。

 これまでは、72フィートのカタマランを自由に設計して建造するために巨額の資金と長大な試行錯誤の開発時間が必要だったのと比べると、AC45s級は艇の仕様と規格が細かく決まっているため、設計開発の要する時間と建造にかかる費用を抑えることができる(船の重さは従来の20トン前後から1.5トン前後まで少なくなり、それにともなって建造費も抑えることが可能になるという)ため、後発となるソフトバンク・チーム・ジャパンにとって有利な条件がそろっていると説明する(ただし、この変更が2015年3月末にオラクルチームUSAがら一方的に出されたため、すでにAC62級を建造していた伊ルナロッサが撤退を表明し、エミレーツ チーム ニュージーランドも撤退を検討している)。

 その上で、早福氏は、オラクルチームUSAからの技術供与を受けることを正式に認めた。ただし、船体やマスト、セールなどは提供を受けるものの、水中翼の部分については独自に開発を行う。なお、ニッポンチャレンジでは、設計開発から建造まで日本で行ってきたが、ソフトバンク・チーム・ジャパンの使用艇は、米国で建造する予定であることも明らかにした。早福氏は、ニッポンチャレンジで得た技術やノウハウの継承はなく、イチからスタートすると語っている。

ソフトバンクはアメリカズカップにどこまで本気なのか?

 ソフトバンク ブランド推進室室長 兼 ソフトバンクモバイル 執行役員 広告宣伝本部 本部長の栗坂達郎氏は、ソフトバンクはスポンサーとしてチームのアメリカズカップ挑戦を支援するという同社の役割を説明した上で、ソフトバンク・チーム・ジャパンの活動を多くの人に知ってもらうサポートのために、「CMやグループ企業のWeb媒体で積極的にアピールしていく」(栗坂氏)考えを示した。

 ただし、アメリカズカップで勝つためには数回にわたる継続的な取り組みが必要になるだけでなく(ニッポンチャレンジは3回の挑戦でも予選を突破できなかった)、アメリカズカップを勝ち取った場合には、その次の大会を主催しなければならないなど、長期的な支援とサポートが必要になるが、その資金的な見通しについて具体的な内容を示していない。また、スポーツの普及には、実際にそのスポーツを体験したり観戦したりできる機会が必要になるが、日本では多くの人が気軽に安価にセーリングを行うための施設や組織、体制などが十分でない。この点についてもソフトバンクでは具体的な考えや計画について「これからの検討」とのみ述べている。

 なお、有力2チームの撤退が懸念されている第35回アメリカズカップの行く末を心配したオラクルチームUSAの代表で、自ら艇長としてレースにも参加するオラクル CEOのラリー・エンソン氏が、個人的に孫正義氏を誘ったのではないかという質問に栗坂氏は、「エンソン氏と孫は個人的にも知り合いで私的な会話をすることもあるが、そういう話があったかという細かいところは確認できていない」と答えている。

参加表明には挑戦ヨットクラブの関西ヨットクラブ理事長の渡邊浩氏(写真=左)と日本セーリング連盟会長の河野博文氏(写真=右)も登場した。河野氏は、2020年東京オリンピック開催決定に続くうれしいニュースと述べ、日本でアメリカズカップとヨットレースのことを広く知ってもらうとともに、セーリング技術を向上するためのチャンスと期待を語った

テレビプロデューサーのテリー伊藤氏とタレントの橋本マナミさんもゲストで登場した。堀江健一氏の太平洋単独横断に刺激を受けたテリー伊藤氏は、学生のときにヨット部を自ら立ち上げY-15を操っていたという。いまでも、パワーボートを所有して航海に出ているそうだ

アメリカズカップへの道は長く遠く時間もかかる。それでも日本から挑戦することの意義は大きい。水中翼の開発もあるし、なにより、アメリカズカップのためのセーリング技術もこれから育てていくことになる。優勝したから終わりということもできない。長期にわたって継続した支援をする覚悟があるのかどうか。それが、アメリカズカップの挑戦で最も重要なポイントだ

関連キーワード

ソフトバンク | 挑戦 | スポーツ | 孫正義


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.