――メジェド様は「エジプトの偉い神様」だそうですが、一体どんな神様なのでしょうか。そしてどうしてLINEスタンプになってしまったのでしょうか。
いかにも我は古代エジプト神。役目は“打ち倒す者”である。すなわち、戦う神だ。不可視の能力によって敵に悟られることなく、目によって放たれる攻撃により敵を殲滅(せんめつ)する。主食は咎人の心臓。普段は冥府神・オシリス様の護衛を担っておる。オシリス様に仇なす者は、どのような者であろうと容赦はせぬぞ。
……とはいえ、古代エジプト文明の終焉から数千年、現代では争いごとも滅多にない。ある時、“日本”という遠い島国で我のことが話題になっていると耳にしたのだ。実に驚いた。それもすべて、古代エジプト時代に生きていた人間が“壁画”という形で我ら神々のことを後世に残した結果なのだ。我はいたく感動した。
そこで考えたのだ。我の存在をさらに広く認知してもらうには、後世まで語り継がれるようにはどうすればよいのかを。そしてたどり着いた答えこそが、LINEスタンプなのである。
――な、なるほど……? スタンプの“監修”は自ら手掛けていらっしゃるとのことですが、こだわりやチャームポイントは。
他のスタンプにはなかなかない、独特のセリフを用いているのがこだわりだ。LINEスタンプにはセリフ付きのものが数多あるが、「おはよう」「おやすみ」などの言葉だけではよくあるスタンプと同じになってしまう。
我は神ゆえ、人間と一線を画すためにも独特なセリフを用意したのだ。神ならではのセリフや、エジプトに関連したものなどがある。もちろん独特なだけではなく、利便性を考慮したセリフばかりであるぞ。……とはいえ独特なものだけでは会話しづらい。基本的なセリフとなるスタンプも少しは用意しておる。安心するがよいぞ。
制作にあたっては、インターネットでよく見かけるフレーズを参考にしておる。頻繁に見かけるということは、それだけ使い勝手が良いセリフなのである。ゆえに流行語などのリサーチは欠かせぬ。特に我は数千年前の存在。現代というものに疎い。努力あるのみだ。それでも思いつかぬ場合は、冥界へと帰還し瞑想することでアイデアを出しておる。しかし、人間には推奨できぬ方法だな。
――神様にこんなことをうかがうのも恐縮ですが、スタンプの売り上げの使い道は。
我の知名度を更に向上するための軍資金、広告宣伝費として主に使用しておる。実は“Facebook”というサイトにも広告を出したことがあるのだ。このように、LINEスタンプが使われれば使われるほど我の知名度が向上するのである。画期的であろう。ゆえに日本中が我で埋め尽くされる日も近いであろうな。
あとは、余った金で心臓を購入しておる。我の大好物だ。仕事終わりの心臓というのはオツなものであるぞ。……もちろん、購入しているのは鶏や牛の心臓だぞ。
まぁとにかく分かったのは、“何もしなければLINEスタンプは売れぬ”ということだ。いくら我に多少の知名度があるとはいえ、販売していることを世に知らしめなければ何の意味もない。そこで大いに役立ったのがSNSだった。我は“Twitter”という場を借りて世の中に発信しておる。少々面倒かもしれぬが、自ら行動を起こさなければ何も起こらぬものだ。
――メジェド様の考えるスタンプ制作の魅力は。
自身で考えたもの、作ったものが他者に使用される喜びを感じることができる。「好き」「使いやすい」と実際に使用している者の声が届くと非常にうれしいものだ。
見ての通り世辞にも“うまい”とは言えぬ我の絵であるが、そんな我でも絵によって他者の役に立つことができるのだ。そのような機会を与えてくれるLINEスタンプというものはやはり魅力的であるぞ。
「エジプトの偉い神様メジェド」シリーズ第3弾を待望する声があがっておると聞いている。まだまだ企画段階であるが、そう遠くない日に何か発表があるやもしれぬな。すでに発売されている「超ゆるいアテン神様」のように、他の古代エジプト神を題材としたスタンプも作っていきたいと考えておる。
「そんなこと言われても我、メジェドやし」というスタンプを気に入っておる。このスタンプは、とにかくどんな言葉にでも返すことができるのだ。スタンプの究極形態といえよう。
特に無理な頼みごとをされたときや、いまいちピンと来ないことを言われたときに真価を発揮する。実際に使用してみれば、この神がかった使いやすさを体感できるであろう。
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