F: アスナさんが「会って、会って、会って」とか「ぷんぷん」と詰め寄ると、「彼女が言ったから仕方なく会った」という言い訳が成立します。いざとなったら逃げる理由にも失敗した理由にもできる。しかし劇中では、言葉や態度では決して追い込まず、でも最終的にキリト君の口から「会いに行くよ」と言わせています。この「自分の口で言わせる」というのは重要で、相手の中に確信を持たせ、自らの責任で行動させるというプロセスなわけです。決まった後の行動がブレないんですよ。自らの決断ですから。
K: 確かに。
F: さらに重要なことは、アスナさんのお母さんは、もともとキリト君とお付き合いすることをそれほど快く思っていません。それが「キリト君が来ると言えば、いつでも会う」状態になっていたり、うそをついてごまかすタイプに見えないアスナさんの外泊が、さして問題になっていなかったりしているということは、既にキリト君を彼氏として認めるどころか、泊まりで星空を見に行くことを含め、お母さんとのネゴシエーションが全て完了しています。
絵図の描き方を含め、すごい根回しをやってのけている。それでいて、あくまでもキリト君が自主的に動いて、自分はそれに従うように動いたと見えるように話をまとめています。恐ろしいマネジメント能力です。この相手が「自らが決断して行動した」と思わせながら自分の意図通りに行動させることが、ソーシャルエンジニアリングの真骨頂です。インテリジェンスがスカウトしたい人材ですよ。
K: 恐るべし、アスナさん!
F: ただソーシャルエンジニアリングもところ変わればかわいいおねだりであり、アスナさんは悪意がある攻撃者ではないので、“末永く爆発”してキリト君はがっつり尻に敷かれ続けてください。きっと幸せになれるでしょう。
K: ブふぉ! キリト君と年が近いので心に響く……。
F: あとサイバー攻撃ではありませんが、キリト君が総務省の菊岡さんへメールを送っているとき、映り込んだメールソフトの画面が気になりました。メールの送信元が、Amazon.co.jpらしきもの、バイク屋、東急ハンズ、ローソン……。キリト君、仲間以外に友達いないのでしょうか。心配で少し悲しくなりました。どうか友達とはSNSでやりとりしていますように。
K: そこですか!
F: SAOを見ていると時々思うのですが、原作者の川原礫さんの意図か、アニメ監督の演出か、ちょっとした侘しさを感じるときがあります。例えば、キリトのライバル、エイジ君が海辺の公園でビールを飲んでいるシーンがありますが、実は公園はARで作り出した空間で、電話がかかってくると現実世界に戻る“1人AR晩酌”でした。別の舞台「ガンゲイル・オンライン」では、死闘を繰り広げて優勝したシノンが、キリトと抱き合って喜んだかと思えば、次の瞬間、現実世界に戻ると貧乏な一人暮らし……。独居老人の私としてはぐっときますね。
K: それはもうサイバーセキュリティは関係ないですよね。人生のセキュリティですよね?
F: シノン……(バイト頑張れ……)。
F: 内閣サイバーセキュリティセンターは、皆さんのサイバーセキュリティ意識の向上のために、中高生から大人まで楽しんで学べる「情報セキュリティハンドブック」を、Amazon.co.jpなど国内26の電子書店、スマホアプリ(iOS/Android)で無料配布しています。印刷して無料配布してもよし、趣旨を変えないならば一部を切り出してプリントにして配ってもよし。特に教材に困っている学校の先生、企業のセキュリティ担当者の方々は、活用しやすいかと思いますので、ぜひご覧ください。とても役所が作ったとは思えないポップなハンドブックですよ、よろしくお願いします!
K: ……。これ誰が作ったんでしょうね。
F: (ギクッ)
K: 並大抵の人には書けませんよね、この内容と量。だからライターとして“死んだふり”してもバレるんですよ。
F: _(:3)∠)_
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