K: 文月さんは、SAO OSに「ソーシャルエンジニアリング」の要素があるとも仰っていましたね。どこにそんな要素があるのですか?
F: まずソーシャルエンジニアリングとは何か、説明しましょう。通常ハッキングというと、悪意のハッカーがインターネット経由で誰かのコンピュータやスマホのセキュリティホールを利用して攻撃すること――と思われがちですが、実はそれだけではありません。
ハッキングには、ソーシャルエンジニアリングという、人間の心の隙=セキュリティホールを攻撃し、目当ての情報を引き出したり、望み通りの行動をさせたりするものもあります。サイバー攻撃がデジタルなハッキングであるとすると、人間の心の隙を突く攻撃はアナログなハッキングです。
例えば、社長のふりをして会社の会計担当にメールを送り、金銭を振り込ませるとか、会社から出た紙ごみを調べて重要な書類を探し出すとか。身近なところでは、電車内の座席でスマホをいじっている人のそばに立って、スマホのロック解除コードを盗み見る、というものもあります。私がその中でも最も高度だと思うのが、相手に気付かせずに思い通りに操るテクニックです。
K: 劇中で一体誰がそんなことを?
F: ヒロインのアスナさんです。
K: 何だってー!?
F: 異論は認めますが、私はSAO OSは「アスナさんがキリト君をお母さんに紹介し、恋人として認めたという証拠(エビデンス)を作る話」だと思いました。
K: ええええ!?
F: アスナさんは劇中で数回、キリト君を明確に“攻撃”しています。1つ目は「お母さんがキリト君に会ってみたいって」というせりふ。2つ目が、キリト君と星空を見に行くデートで「(お母さんに)誰と行くのか聞かれちゃった」というせりふ。3つ目は、キリト君がアスナさんの部屋を訪れたとき、キリト君が日記を盗み見てしまったところに遭遇しても、何も責めなかったこと。
1つ目と2つ目のせりふは、その後に間があり、キリト君の煮え切らない態度を示しても無言でニッコリしている。日記を見たときもすぐには何も言わず、怒るわけでも責めるわけでもない。通常こういったときに、すぐリアクションを返したり、怒ったりすると、言い争いになり、その態度を言い訳にして、相手は自分の行動を正当化します。ところがアスナさんはキリト君を「リアクションが取れない状態」にして、相手の負い目を積み上げていきます。最初は演出のミスかなと思ったのですが、計8回ぐらい映画館で見て確信しました。明らかにアスナさんはキリト君をじんわりと追い込んでいっています。
K: ……詳しく(ゴクリ)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR