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「中絶薬」検索だけで罪に問われる可能性 米最高裁判決でGoogleが追い込まれた背景Googleさん(2/2 ページ)

» 2022年06月27日 14時27分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]
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Googleに対して検索履歴や位置情報請求がある可能性

 中絶が犯罪になった州から、中絶したと疑われる個人の検索履歴(中絶とか中絶薬とかを検索していなかったか調べる)や位置情報(薬局とか病院にいったかなどを調べる)を請求されることになるとみられます。

 Googleサービスでの位置情報提供は、「ロケーション履歴」のオン/オフでユーザーが選択できるようになっており、デフォルトはオフです。これ、Googleマップを使うときとかに便利なので、オンにしている人も多いのではないでしょうか(私はオンにしてます)。Googleのパーソナライズ広告の設定もオンにしておくと(私はオフにしてます)、表示される広告にも位置情報による最適化が行われます。

 ロケーション履歴をオンにすると、Googleアカウントでログインしたスマートフォンを持って歩いた履歴が、長期間にわたってGoogleに筒抜けになります。

 で、もし悪いことをすると、その履歴が法執行機関の手に渡る可能性があるわけです。中絶を悪いことだとしている州では、位置情報履歴も請求されることになるというわけです。

 上で紹介した議員たちの書簡では、位置データの収集方法を再設計して、端末データを集計レベルでのみ収集するようにし、必要以上に長く保持しないよう要求しています。

 米電子フロンティア財団(EFF)も、「If You Build it, They Will Come──So Don't Build It, Don’t Keep It, Dismantle What You Can, and Keep It Secure」と、なぜかフィールド・オブ・ドリームスの名台詞をもじってプラットフォームにユーザー保護を求めました。データがあればやつらは来る。だからデータを集めるシステムを構築せず、データを保存せず、既にあるものを廃棄して、安全にしてください、と。

 これまでもGoogleは個人データの取り扱いで特にEUから厳しいことを言われているし、年々厳しさが増していますが、中絶禁止でまた拍車がかかりそうです。

 収益のほとんどが広告であるGoogleにとって、個人データは貴重な資本。それを集めるな、保存するなと言われても、代替手段が確立できるまではつらいところです。

 もちろんGoogleはその対策に数年前から取り組んでいますが、個人データを直接利用しないで効果的な広告を表示できるようにする技術の構築にはまだ時間がかかりそうです。


 それにしても、「中絶薬」と検索しただけで犯罪の証拠になるのは怖い。そういう検索をするなら、Mozilla創設者の1人、ブレンダン・アイク氏のBrave Searchを使い、チャットはE2EE(End to End Encryption)のTelegramやSignalを使うのがいいかもしれません。

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