稼働から89年も経つ水力発電所がパワーアップ、約1000世帯分の電力供給量を増加自然エネルギー

1923年(大正12年)に稼働を開始した新潟県の水力発電所が1400kWにのぼる発電能力を増強できることになった。電子材料や化学品を製造する電気化学工業が保有する発電所で、川の流量の増加によって、発電に使う取水量を増やすことが可能になったためだ。

» 2012年06月20日 12時01分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 電力の供給源を拡大する取り組みが全国各地で加速している。特に再生可能エネルギーに注目が集まっており、太陽光発電や風力発電の新しいプロジェクトが続々と始まっている。そうした中で、古くからある再生可能エネルギーの代表が水力発電である。

 現在でも国内の電力の約9%は水力で生み出されており、再生可能エネルギーの約半分を水力が占めている。ダムの建設が環境破壊につながるとして、水力発電がネガティブに受け取られることも多かったが、最近になって中小規模の水力発電が再生可能エネルギーの有望な分野として脚光を浴び始めた。

 製造業の場合は工場用の電力供給源として水力発電施設を運用する例も多く、その典型例を電気化学工業に見ることができる。新潟県糸魚川市にある工場の周辺に、「流れ込み式」と呼ばれる水力発電所を15か所も保有しており、合計で約11万kWの発電能力がある。

ALT 図1 1923年に稼働を開始した大所川発電所(新潟県糸魚川市)

 そのうちの1つである「大所川発電所」(図1)は89年前の1923年から稼働を開始して、従来は最大で8400kWの発電能力があった。

 この発電所が一気に1400kWも出力を上げて9800kWの電力を生み出せるようになる。年間で約350万kWhの電力供給量の増加で、およそ1000世帯分の電力使用量に相当する規模だ。

 いわゆるメガソーラー(太陽光発電所)の発電能力が1MW、つまり1000kWであることを考えると、1400kWの発電能力の大きさが分かる。しかも発電所に取り入れる水の量を増やすだけで実現できる。新潟県の河川は雪解けによる豊水期が年間120日程度あり、それを活用することで最大出力を上げることが可能になった。

 電気化学工業は今後ほかの水力発電所にも同様の手法を展開する計画だ。中小規模(出力3万kW未満)の水力発電は、7月1日から始まる「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」の対象にも入っている。既存の水力発電所を含めて新たな取り組みが各地で広がっていく。

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