オフィスの中で季節に関係なく電力を使い続ける機器はいろいろある。最も電力使用量が大きいのは照明で、次がパソコンやプリンタなどのOA機器である。OA機器の場合は実際に使用していない時の節電対策が効果を発揮する。オフィス向けのカラーレーザープリンタで検証してみる。
これまで照明・空調・パソコンと3つの製品分野で見てきたように、電力使用量を大幅に削減する最も効果的な方法は新しい機種に切り替えることである。当然ながらプリンタにも当てはまる。一時的にコストはかかるが、数年間にわたる節電対策になる。
一般的なオフィスで使われているプリンタは、高速印刷が可能なA3対応のカラーレーザープリンタが多い。キヤノンの製品で比較してみると、9年前の2003年に発売された機種と3年前の2009年に発売された機種では、実際の電力使用量が6倍以上も違う(図1)。最新の機種では、さらに消費電力が下がっている。
オフィス向けのプリンタとしては、レーザービーム方式のほかに低価格なインクジェット方式がある。多くのオフィスで使われているのは高速のレーザービーム方式だが、印刷時の消費電力はインクジェット方式に比べて格段に大きい。
最新の製品で比較すると、インクジェット方式の消費電力が20W程度と低いのに対して、レーザービーム方式の消費電力は1000W以上にもなる。消費電力が大きい空調機器でも、最近はオフィス向けで1000W程度の製品が出てきており、レーザービーム方式のプリンタの消費電力は意外に大きい。
そこでメーカー各社はプリンタの節電対策のひとつとして、印刷していない時の電力使用量を大幅に引き下げる機能に力を入れている。印刷が完了した後に「スリープ」状態に移行して、消費電力をわずか1〜3W程度の微小なレベルに抑える機能である(図2)。
スリープ機能を設定しておくことによって、印刷していない大半の時間帯で消費電力をほぼゼロに近づけることができる。ただしスリープの状態から印刷できる状態に復帰するまでには一定の時間を要する。最新の機種でも10秒程度かかる。このため頻繁に印刷する用途では使いにくい。そのような場合にはインクジェット方式のほうが節電効果と利便性の両面で優れている。
どの電気製品でも同じだが、カタログに書かれている消費電力は瞬間的な電力使用量を表すものである。この消費電力に使用時間をかけ合わせて、1日あたり、あるいは月間や年間の電力使用量を計算することができる。
特にプリンタの消費電力はスリープや電源オフの状態で非常に小さくなるため、印刷の頻度や間隔によって電力使用量が大幅に変わってくる。そこで標準的な利用状態を設定してプリンタの節電性能を評価する国際的な基準値が決められている。「TEC値」と呼ばれるものだ。
TECは「Typical Electricity Consumption」の略で、一般のオフィスにおける典型的な利用状況をもとに1週間分の電力使用量を算出したものである。一定の回数の印刷を平日の午前と午後に実行しながら、印刷の合間にスリープや電源オフの状態を加えて計算する(図3)。
このように5日間の平日と2日間の休日を合わせて、1週間でどのくらいの電力使用量になるかを示したものがTEC値である。単位は電気料金の単価と同じkWh(キロワット時)で表す。
主要メーカーのA3カラーレーザープリンタのTEC値を確認すると、毎分30枚の印刷が可能な中級機で1〜2kWhと非常に小さい。スリープ状態の消費電力がほぼゼロに近くなるためだ。
最近では毎分40枚の高速印刷が可能な上級機でもTEC値が2kWh程度に抑えられている(図4)。TEC値が1〜2kWhだと月間の電力使用量は10kWh以下で収まる。プリンタ1台あたりの電気料金は企業向けの電力契約であれば月に100円〜150円で済む。
連載第3回:「パソコン」の傾向と対策
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