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» 2012年11月27日 09時00分 UPDATE

日本列島エネルギー改造計画(17)新潟:バイオマス発電で全国トップ、太陽・地熱・海洋エネルギーにも着手

雪国のイメージが強い新潟県だが、早くからバイオマス発電に力を入れ、全国で第1位の発電量を誇る。さらにバイオマス以外の再生可能エネルギーも拡大するため、県みずから太陽光発電所の建設・運営に乗り出したほか、地熱発電や波力・潮力など海洋エネルギーの開発も進行中だ。

[石田雅也,スマートジャパン]

 日本全国の地方区分で「甲信越」と呼ばれる山梨・長野・新潟の3県は、実は電力会社の管轄がすべて別々に分かれている。山梨県は東京電力、長野県は中部電力、そして新潟県は東北電力の管内に入る。

ranking_niigata.jpg 図1 新潟県の再生可能エネルギー供給量(2010年3月時点)。出典:千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2011年版報告書」

 その一方で新潟県内には東京電力の柏崎刈羽(かしわざきかりわ)原子力発電所がある。電力供給に関しては複雑な事情を抱えているが、それだけに再生可能エネルギーの導入にかける意気込みは大きい。

 中でも県内に豊富にある農業資源を活用できるバイオマスに関しては、2004年に「バイオマスにいがた構想」を掲げて、資源の多角的な活用を進めてきた。その結果、バイオマス発電は全国で第1位の規模に達している(図1)。

 代表例は「糸魚川バイオマス発電所」(図2)である。建築物の廃材を燃料にして50MW(メガワット)の大規模発電が可能だ。年間の電力供給量は2億kWhを超え、これだけで新潟県の家庭が年間に使用する電力(約50億kWh)の4%程度をカバーすることができる。

itoigawa_biomas.jpg 図2 糸魚川バイオマス発電所。出典:サミット明星パワー

 この発電所では補助燃料として石炭を30%混ぜているため、バイオマス専用の発電設備ではないが、神奈川県にある川崎バイオマス発電所の33MWを大きく上回って実質的には国内最大のバイオマス発電所と言える。

 特に注目すべき点は、資源の再生可能性を徹底させていることである。運営主体がセメント会社であることから、発電用に燃焼した木材の灰をセメントの原料として再利用している。発電した電力はセメント工場で利用し、余剰分を新電力に供給する。循環型で効率的な資源とエネルギーのリサイクルを実現しており、再生可能エネルギーの導入事例として全国のモデルケースになるものだ。

 バイオマスの拡大と並行して、新潟県は太陽光発電所に関しても先進的な取り組みを実施している。その典型例は県の企業局が産業団地の中に建設した「新潟東部太陽光発電所」(図3)に見ることができる。

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toubu_solar.jpg 図3 新潟東部太陽光発電所の可変式設備。出典:新潟県企業局

 2011年10月に1MWの1号系列を運転開始し、さらに固定価格買取制度が始まった2012年7月に同じく1MWの2号系列を稼働した。このうち1号系列は夏と冬で太陽光パネルの傾斜角度を変えられる新方式を採用した点が特徴だ。太陽光が高い位置から降り注ぐ夏は水平に近い20度に、太陽光が低くて積雪もある冬は40度に変えることができる。

 さらに一部のパネルには太陽光を自動的に追尾して方角を変える機能を装備し、強風時にはパネルを水平にして風圧を避けられるようにした。こうした工夫が功を奏して、1号系列の運転開始から1年間の発電量は当初の見込みを15%も上回る114万kWhを記録している。

matsunoyama.jpg 図4 松之山温泉のバイナリー地熱発電。出典:新潟県産業労働観光部

 これに続く太陽光発電所の拡大を進める一方で、地熱発電や波力・潮力発電でも新しい試みに着手している。新潟県は温泉の数が全国で3番目に多く、温泉熱を利用した「バイナリー発電」の実証実験に注目が集まっている。

 バイナリー発電は通常の地熱よりも低い100度以下の温泉熱でも発電が可能な方法で、県内の松之山温泉にシステムを導入して2011年12月から稼働を開始した(図4)。発電能力は87kWあり、一般家庭100世帯分の電力を作り出すことができる。温泉熱を利用したバイナリー発電システムとして実用レベルの稼働は国内初だ。

 もうひとつの注目プロジェクトは、日本海に浮かぶ粟島(あわしま)の海洋エネルギー開発である。面積がわずか10キロ平方メートルの小さな島を拠点にして、波力と潮力を活用した発電事業の検討が進められている(図5)。

awashima.jpg 図5 海洋エネルギー実証実験候補地の粟島。出典:新潟県産業労働観光部

 波力は冬に大きくなり、一方の潮力は夏に大きくなる特徴がある。この2つを組み合わせることで、海洋エネルギーによる安定した発電を実現する試みだ。波力の設備は海面に浮かせ、潮力の設備は海底に固定する形を想定している。

 あくまで実験レベルだが、波力で50kW、潮力で250kWの発電能力を見込む。海に囲まれた日本にとって波力や潮力は有望な再生可能エネルギーであるだけに、早期に成果が出ることを期待したい。

2014年版(17)新潟:「雪に負けず増え続けるメガソーラー、日本海の風力や波力も有望」

2013年版(17)新潟:「雪国で生まれる小水力とバイオマス、冬の太陽光は角度でとらえる」

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