木質バイオマスで先行、風力や太陽光も大規模に進む日本列島エネルギー改造計画(24)三重

観光地の伊勢志摩で有名な三重県は海のイメージが強いが、実は県の3分の2を森林が占めていて林業が盛んだ。木材によるバイオマス発電や熱利用は全国でもトップレベル。さらに紀伊半島の気候を生かした風力発電や太陽光発電の大規模プロジェクトが広がってきた。

» 2012年12月20日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 隣接する愛知県や岐阜県では太陽光発電や小水力発電の導入が進んでいるが、三重県ではバイオマス熱の利用が目を引く。全国でも4番目の供給量を誇る規模に拡大している(図1)。その最大の要因は、県内の森林から豊富にもたらされる木質バイオマスにある。

図1 三重県の再生可能エネルギー供給量(2010年3月時点)。出典:千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2011年版報告書」

 日本最大の紀伊半島の東側を占める三重県は海洋資源とともに森林資源に恵まれている。県の3分の2が森林で、昔から林業が盛んな土地柄だ(図2)。

 しかし最近では林業も厳しい環境にあり、新しい分野への展開が急務になっている。その取り組みのひとつが、未利用の間伐材などを生かした再生可能エネルギーの活用である。

 三重県の木質バイオマスでは代表的な事例が2つある。1つは銘柄牛の産地としても有名な松阪市のバイオマス熱を利用したプロジェクトだ。市内や周辺地域には間伐材や加工後の端材など、使い道のない木質資源が大量に存在する。それをチップにしてボイラーで燃焼させて、発生する熱を近隣の工場に供給している。この施設はコンピュータ制御で運営されており、終日稼働させることができる。

図2 三重県の森林。出典:三重県農林水産部

 もう1つは同じ松阪市内で計画中のバイオマス発電所で、木材を燃料に使って5000kWの発電を可能にするプロジェクトが進められている。20億円の事業費をかけて、2014年の秋から運転を開始する予定である。年間に使用する木質バイオマスの量は5万5000トンにものぼる。

 このほかにもバイオマス発電では日本で初めて国の固定価格買取制度で認定された「ごみ発電所」が三重県内にある。県の企業庁が運営する「三重ごみ固形燃料発電所」で、家庭などから出される生ごみを固形燃料に加工して発電する設備だ(図3)。発電能力は1万2000kWもあり、バイオマスを含む固形燃料を使った発電所としては国内で最大級である。

図3 松阪木質バイオマス熱利用協同組合のボイラー施設(左)、三重ごみ固形燃料発電所(右)。出典:松阪市環境部、三重県企業庁

 ただしバイオマスは資源に限りがあり、今後の拡大余地はさほど大きくない。三重県が次に力を入れて取り組んでいるのが風力と太陽光だ。2020年に向けて、太陽光発電を10年間で8倍に、風力発電を3倍以上の規模に拡大する目標を打ち出している(図4)。

図4 三重県の再生可能エネルギー導入目標。出典:三重県雇用経済部

 すでに風力では大規模な発電所が県北西部の青山高原で稼働中だ(図5)。中部電力グループが31基の大型風車を使って3つの発電所を建設した。合わせて5万7000kWの発電能力になり、国内有数の風力発電設備を作り上げている。

図5 青山高原にある風力発電所のひとつ「ウインドパーク美里」。出典:中部電力

 さらに海に近い地域でも風力発電のプロジェクトが進んでいる。25基の大型風車による発電所を伊勢市の近隣に建設する計画だ。現在は環境影響評価の段階で、認可されれば数年以内に稼働する。ただし地元では建設反対の声が上がっており、予定通り計画が進むかどうか不透明な状況にある。

 再生可能エネルギーは必ずしも環境に優しいとは限らない。風力発電だけではなく、太陽光を含むすべての再生可能エネルギーは発電設備によって少なからず環境に影響を与える。その中では太陽光発電の影響が最も小さい。騒音がほとんどなく、地球上の資源を使うこともない。工場や倉庫の跡地などを再利用して地域を活性化できるメリットもある。

 三重県にも農業用地として干拓されたまま放置されていた広大な土地が愛知県との間にまたがって存在している。そこに5万kW(50メガワット)クラスの大規模なメガソーラーを建設する計画が先ごろ決まり、2014年の秋に運転を開始することになった。干拓地は木曽川の河口にあるが、太陽光発電ならば環境への影響を心配する必要はなさそうだ。

2014年版(24)三重:「湾岸一帯にメガソーラーの建設ラッシュ、地域に貢献する電源が広がる」

2013年版(24)三重:「高原一帯に90基を超える大型風車、干拓地や住宅地には巨大メガソーラー」

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