木質バイオマス供給協議を打ち切り、使用量低迷で効果得られず自然エネルギー

三重県は県産の木質バイオマス(木質チップ)を石炭火力発電所に供給することを目指して中部電力と協議を続けてきたが、打ち切ることを明らかにした。

» 2012年12月03日 07時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 三重県は、中部電力の石炭火力発電所「碧南火力発電所(愛知県碧南市港南町)」(図1)に三重県産の木質チップを供給し、石炭にチップを混合して燃焼させる「混焼」に利用してもらうことを計画していた。

図1 中部電力の碧南火力発電所

 碧南火力発電所では2009年から海外産木質チップを利用して石炭との混焼の実験を始め、2010年9月から混焼の本格運用を始めていた。年に約30万トンの木質チップを燃料として使用しており、燃料の中で木質チップが占める割合(混焼率)はおよそ3%となっている。

 三重県は中部電力に県産の木質チップ提供を申し入れ、碧南火力発電所では2012年2月から3月の間、三重県産木質チップと石炭の混焼実験を実施した。実験の結果、三重県産の木質チップは混焼に利用できるが、チップから樹皮を除去する必要がある上、海外産木質チップと比べると混焼率を上げられないという問題が明らかになった。

 県は林業活性化など、地域貢献の意義を訴え、中部電力に木質チップ受け入れを求め、協議を続けていたが、中部電力は、混焼率が下がってしまうと再生可能エネルギーの利用が進みにくくなることを理由に難色を示していた。

 石炭火力発電所でバイオマス燃料を混焼する最大の目的は、CO2排出量を減らす点にある。石炭火力発電所は、ほかの燃料を利用する火力発電所に比べてCO2を多く排出する。そこで、燃焼させてもCO2を排出したことにならない「カーボンニュートラル」という特性を持つバイオマス燃料を利用する。つまり、混焼率が下がってしまうと、CO2排出量減少という目的を果たせなくなるということだ。

 中部電力との協議を打ち切った三重県は、三重県松阪市で2014年から稼働を始める予定の発電施設に木質チップを供給するために、交渉を始めていること、チップの原料となる間伐材の収集を始めていることを明らかにした。

 バイオマス発電の中でも間伐材を利用した発電には、森林の環境維持という効果を期待できる。CO2減少のために植林しても、間伐などの管理が行き届かなければ荒れてしまい、CO2吸収量が減るほか、大雨で地盤が緩んで大規模な土砂崩れを起こす可能性がある。森林管理の結果として生まれる間伐材を利用するバイオマス発電にはCO2排出量削減だけでなく、CO2を吸収する森林の保護という効果を期待できるのだ。太陽光発電や風力発電と比べると、バイオマス発電は実用化の例が少ない。固定価格買取制度における買取価格を見直して、実用化を促進させることも必要ではないだろうか。

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