太陽光発電で被災地の農業を再生、植物工場の建設が始まる自然エネルギー

福島県南相馬市は、東日本大震災に伴う津波の被災地に太陽光発電所と植物工場の建設を始めた。2013年3月に完成する予定。太陽光発電所で発電した電力の一部を植物工場に供給し、余った分を電力会社に売電する。

» 2012年12月27日 07時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 南相馬市は福島県の太平洋岸に面しており、東日本大震災発生時は津波で大きな被害を受けた。さらに市の南部が東日本大震災直後に大事故を起こした福島第一原子力発電所から20kmの域内にある。事故から1年9カ月が経過したが、いまだに市内の一部地域が帰還困難地域となったままだ。風評被害もあり、主要な産業である農業の再開もなかなかうまく行かない。

 市は今回建設する太陽光発電所と植物工場を「南相馬ソーラー・アグリパーク」と名付け、復興の象徴、被災地の農業復興のモデルとし、福島県全体の復興を促進させたいと考えている。南相馬ソーラー・アグリパークの建設予定地は、太平洋岸と国道6号線の中間に位置しており(図1)、津波で大きな被害を受けた場所だ。広さはおよそ2万4000m2

図1 南相馬ソーラー・アグリパークの建設予定地。出典:南相馬市

 計画では2万4000m2のうち1万m2に太陽光発電システムを設置する(図2)。最大出力は500kWの予定。そのうち100kWに当たる分を隣接する植物工場に供給し、残りの400kW分は固定価格買取制度を利用して電力会社に売電する。

図2 太陽光発電所の完成予想図。出典:南相馬市

 植物工場は2棟建築する。ドーム型のビニールハウスのような形をしており、内部では土を使わず水耕栽培でレタスを栽培する(図3)。植物工場の中では季節に関係なく植物を栽培でき、レタスなら夏は苗を植えた後およそ40日で収穫できる。冬なら苗を植えてからおよそ75日だ。

図3 植物工場の例。上が外観で下が内部。出典:南相馬市

 1日の生産量は約450株(1株をおよそ100gとした場合)と見込んでいる。ここで収穫したレタスはスーパーマーケットのチェーン店を展開しているヨークベニマルが全量仕入れる。

 南相馬市は、太陽光発電所と植物工場を見学できる施設も作る予定。農業体験を受け入れる準備も進める。見学と農業体験を受け入れていくことで、風評被害をなくしていき、南相馬市の農業に対する信頼を取り戻そうと考えている。

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