電力自由化の流れは止まらず、地域独占から市場開放へ2013年の電力メガトレンドを占う(2)

政権が自民党に変わっても、電力自由化の流れが止まることはないだろう。硬直した電力市場が国益にそぐわないことは明らかだ。小売の全面自由化に続き、電力会社が独占する発電・送配電・小売の一貫体制を変革する日は近い。新しい電力市場では、事業者と利用者の選択肢が大幅に増える。

» 2013年01月15日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 自治体を中心に、電力会社から新電力へ契約を切り替える動きが加速している。東京電力に続いて電気料金を値上げする動きが他の電力会社にも広がり始め、もはや利用者は黙って見過ごすわけにはいかなくなった。

 現在のような地域別に1つの電力会社が市場を独占する体制が作られたのは1951年のことである。すでに60年以上が経過しているにもかかわらず、東日本大震災によって問題点が顕在化するまで、旧態依然とした地域別の独占市場が維持されてきた。

 かつて電電公社による独占状態にあった通信市場を見れば明らかなように、市場を開放すれば競争によってサービスの向上や料金の低下が進み、結果として利用者のみならず事業者の競争力も高まる。電力市場の開放は待ったなしの状況だ。

政権交代で具体案の公表が遅れる

 政府は民主党の方針に従って電力システム改革の具体策を1年間にわたって重点的に検討してきた。大きな課題は「小売の全面自由化」と「発送電分離」の2つである。このうち小売の全面自由化に関しては、新しい制度の骨格を2012年12月6日に発表している。

 もうひとつの発送電分離に関しても、本来ならば12月末までに具体案を公表する予定だったが、政権が民主党から自民党へ交代したことによって最終的な調整作業に遅れが生じているものとみられる。

 政権交代によって方針が変わる可能性はあるものの、電力市場を抜本的に変革する必要性は明らかで、これまでの流れが後退することは考えにくい。2012年度が終わる3月末までに発送電分離に向けた方針をどのような内容で発表するかによって、新しい政府がどれほどスピード感をもって電力市場の改革に取り組む意欲があるかを占うことができる。

小売の全面自由化は2014年度にも

 電力市場が開放されると、利用者は地域を越えて最適な事業者を選ぶことが可能になる。加えて電力の配給を担う送電と配電の事業を発電事業者から独立させる発送電分離が実現すれば、発電事業者と小売事業者のそれぞれで競争が活発になることは確実だ(図1)。

図1 電力市場の変革イメージ。出典:電力システム改革専門委員会

 小売の全面自由化と発送電分離を見据えた改革案の策定が予定通りに進んでいけば、それをもとに2年後の2014年度をめどに電気事業法を改正して、改革の第一歩が始まる見通しである。

 まず小売の自由化に関しては、現時点で電力会社しか販売できない家庭や店舗を対象にした低圧(契約電力50kW未満)の規制を撤廃する。その際に一部の利用者が不利益をこうむることのないように、最低限のサービスを保障する仕組みも用意する。

 実際には時間ごとの電力使用量を計測するためのスマートメーターの導入が必要になる。すでに東京電力が政府の方針を受けて2014年度からスマートメーターの設置を開始する計画を進めている。早ければ2014年度のうちに小売の全面自由化が始まる。

発送電分離の実施は現時点で不透明

 一方の発送電分離は既存の電力会社を解体することになるため、実現までには時間がかかりそうだ。最終調整中の政府案がどこまで踏み込んだ内容になるかで、ある程度の見通しがつくだろう。

 安倍首相が原子力発電を含む今後のエネルギー供給体制に関して3年以内に具体策を決定すると表明している。その中で発送電分離についても合わせて検討する可能性がある。そうなると2015年度まで結論が持ち越されて、実施は2016年度以降になってしまう。

 新政権の電力市場改革に向けた意欲をはかるうえでも、近く開催されるはずの「電力システム改革専門委員会」からの報告内容が注目される。

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