2013年度は風力発電が最重点、再生可能エネルギーで1000億円以上の予算法制度・規制

安倍政権が発表した緊急経済対策に沿って、経済産業省が2013年度の予算として1兆1614億円にのぼる概算要求を提出した。風力発電を中心に再生可能エネルギー関連で1000億円以上、省エネ設備やクリーンエネルギー自動車の導入補助などで2000億円以上の要求を盛り込んだ。

» 2013年01月16日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 自民党中心の政権に代わってエネルギー政策の動向が注目されていたが、1月11日に発表した緊急経済対策を見ると、前政権よりも踏み込んだ内容になっている。同日に経済産業省が公表した1兆円以上にのぼる2013年度(平成25年度)予算の概算要求のうち、エネルギー関連で約半分を占めており、石油や天然ガスの確保に向けた予算を除いても3000億円以上が割り当てられる見通しだ。

 特に注目すべきは風力発電に関する予算が大幅に増えることである。中でも金額が大きいのは「風力発電のための送電網整備実証事業費補助金」で、250億円を投じる。風力発電の拡大が見込まれる北海道や東北では、発電所から電力を送るための送電網の能力を増強する必要があり、その分野に取り組む民間事業者を支援するための補助金だ。従来はなかった予算で、経済産業省が新規に要求した中では最大の規模になる。

 このほかにも復興関連で「浮体式洋上風力発電所実証実験研究事業」に115億円、千葉県と福岡県で実施中の「洋上風力発電等技術研究開発」に40億円、風力発電機の効率を改善する「風力発電高度実用化研究開発事業」に20億円を見込んでいる。以上の4件を合わせると400億円を超える規模になる。

 再生可能エネルギー関連全体では1000億円を超える見通しで、太陽光、地熱、バイオマス、小水力発電など、あらゆる再生可能エネルギーの技術開発や導入支援のための予算が組み込まれている(図1)。

図1 再生可能エネルギー関連で経済産業省が申請した平成25年度予算概算要求(1件10億円以上)

 一方、省エネルギーの分野でも前年度を大幅に上回る予算案になっている。工場や事業所に省エネ設備の導入を促進するための「エネルギー使用合理化事業者支援補助金」に542億円を確保する。新しい設備の導入によって1%以上の省エネを実現できる場合に適用可能な補助金で、前年度の343億円から約200億円の増額になる。

 節電に有効なガスコージェネレーションを対象にした補助金の伸びも大きい。新たに「分散型ガスコージェネレーション整備事業」として150億円の予算が組まれており、工場や事業所が導入する大型システムに対する補助金を創設する。従来からある「ガスコージェネレーション推進事業費補助金」は家庭向けも対象に含まれるが、この予算も前年度の33億円から60億円に増額する。

 自動車向けの予算も規模は大きい。電気自動車やプラグインハイブリッド電気自動車などを対象にした「クリーンエネルギー自動車等導入促進対策補助金」が292億円から443億円へ大幅に増える。次世代の燃料電池自動車に不可欠な水素を供給する設備を拡充するための「水素供給設備整備事業費補助金」に50億円、「水素利用技術研究開発事業」に21億円を割り当てる。

 さらに火力発電の効率を向上させる「石炭ガス化燃料電池複合発電」に70億円、高性能な蓄電池を開発する「革新型蓄電池先端科学基礎研究」に35億円などを含めて、再生可能エネルギー以外でも節電・蓄電・発電に関する予算が年間で総額2000億円以上に達する(図2)。

図2 節電・蓄電・発電関連で経済産業省が申請した平成25年度予算概算要求(1件10億円以上)

 ただし、これまでも巨額の予算を投じたエネルギー分野の補助金や技術開発プロジェクトが数多くあったが、必ずしも期待通りの成果を発揮しているわけではない。既得権益が継続されることなく、幅広い企業が公平に利用できるような仕組みやプロセスの整備が望まれる。

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