発送電分離の検討が進む、実施方式は「法的分離型」が有力に法制度・規制

電力市場に競争原理を導入するための「発送電分離」の方向性が見えてきた。政府が2月中に開催する「電力システム改革専門委員会」で実施に向けた具体案をとりまとめる予定だ。電力会社の送配電部門を独立の会社にする「法的分離型」になる可能性が高まっている。

» 2013年01月30日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 いよいよ新政権による通常国会が始まり、懸案の電力システム改革に向けた動きが本格的に始まる。

 最も重要な課題は「小売の全面自由化」と「発送電分離」の2つだ。政府が主宰する「電力システム改革専門委員会」が過去1年間に11回の会合を開き、専門家による検討を進めてきた。これまで実現が難しいとみられてきた発送電分離に関しても、具体的な案が固まりつつある。

電気事業法の改正案に盛り込めるか

 発送電分離が求められる背景にあるのは、現在の電力会社による独占的な市場のもたらす弊害だ。10社の電力会社が発電・送配電・小売の3つの役割を地域ごとにほぼ独占しているため、電気事業の新規参入が難しく、競争原理が働きにくい状況になっている。その結果、発電コストの高い電力が高い料金で売られる構造ができている。

 電力会社による発電・送配電・小売の一貫体制を変革することが発送電分離の考え方だ。特に送配電の部分を電力会社から独立させることによって、発電事業者と小売事業を増やし、競争によって安い電力が流通しやすいようにする。そのためには送配電ネットワークを中立的な立場の事業者が運営する必要がある(図1)。

図1 発送電分離にあたって必要な業務。出典:電力システム改革専門委員会

 と同時に、地域を越えて送配電ネットワークを管理し、全国の電力供給を安定化させることも重要になる。この役割を果たすのが「広域系統運用機関」と呼ばれる組織で、最終的には全国を一元的にカバーする送配電ネットワークの実現が目標になる。

 電力業界を所管する経済産業省の茂木敏充大臣は1月25日の会見で、「広域系統運用機関の創設については法案に盛り込みたい」と語り、発送電分離に向けた動きを進める意欲を示した。2013年度に施行する予定の電気事業法の改正案に加える考えだ。

「発送電分離は不可能ではない」と経産相

 さらに電力会社の送配電部門を分離する計画についても、実施時期を含めて具体案を提示する予定だ。分離の形態は2つの方法が検討されているが、既存の電力会社とは独立の会社にする「法的分離型」になる可能性が大きくなってきた(図2)。1月21日に開催した電力システム改革専門委員会においても、法的分離型を推奨する意見が多数を占めた。

図2 発送電分離を実現する2つの形態。出典:電力システム改革専門委員会

 ただし送配電部門の分離は実施に向けて詰めるべき点が数多く残っており、今回の電気事業法の改正案に盛り込むことは難しそうだ。法案に付属する「プログラム規定」の中で、小売の全面自由化と合わせて実施時期などを記載する程度にとどまる見通しである。

 発送電分離に関しては、当然ながら電力会社から消極的な意見が出ており、実現は困難との見方もある。それに対して茂木大臣は「現時点で法律の形にまで落とし込むのは難しいと思うが、発送電分離を実現すること自体はできない話ではない」との考えを示した。

 電気事業法の改正案に入るにせよ、プログラム規定にとどまるにせよ、発送電分離に向けた流れが進むことは確実な情勢だ。特に実施時期に関して、どのような表現で具体的に示せるのかに注目したい。

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