電力市場の改革に公取委が動く、発送電分離など7項目を提言法制度・規制

電力会社による閉鎖的な市場に競争原理を導入するため、「電力市場における競争の在り方について」と題する報告書を公正取引委員会が発表した。電力会社の発電・送配電・小売部門の分離を含む7つの競争政策を提言し、独占禁止法の運用も明確化することを宣言した。

» 2012年09月24日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 公正取引委員会(公取委)は電力市場に競争上の問題点があるとして、今回の提言に至った。その問題点とは、(1)電力会社の市場支配力が強く、新電力のシェアが伸びていない、(2)電力会社の供給区域を越えた競争が起きておらず,需要家の全国レベルでの一括受電契約が進んでいない、という2つである。

 実際に公取委が各種の統計からまとめた新電力の販売シェアを見ると、2011年度でわずか3.6%にとどまっている(図1)。しかも新電力が顧客として獲得できているのは「特別高圧・業務用」と呼ばれる契約形態が大半で、大企業のうち工場などを持たない業態に限られている。

図1 利用企業の契約形態別に見た新電力の販売電力量シェア。出典:公正取引委員会

 このように電力市場が競争状態になっていない最大の理由として、公取委は電力会社による発電・送配電・小売の独占状態を挙げている。公取委の調査では、国内の発電電力量のうち7割以上が10社の電力会社(一般電気事業者)によって占められている(図2)。

図2 事業者の種別による発電電力量とシェア。出典:公正取引委員会

 発電〜送配電〜小売という電力市場の各プロセスにおいて過半数のシェアを10社の電力会社が維持し、しかも10社が地域別に事業を分担している状況に対して、公取委は有効な競争が期待できない、と結論づけた。今後も独占禁止法を厳正に執行するとともに,電力取引における同法の解釈・運用について明確化を図っていくと宣言している。

 さらに電力市場における競争政策として、次の7項目を提言した。

1.一般電気事業者(電力会社)の発電・卸売部門と小売部門の分離

2.一般電気事業者の送配電部門の分離

3.送配電サービス事業者に対する託送(接続)料金の規制

4.同時同量義務とインバランスに伴う負担の公平性確保

5.地域間を結ぶ連系線・連携設備の増強

6.卸電力取引所の活性化

7.スマートメーターに関連する競争阻害要因の排除

 このうち電力会社の事業を機能別に分離する必要性は、かねてから指摘されてきたことである。公取委が独占禁止法の執行も視野に入れて提言したことにより、電力会社は具体的な検討を進めざるを得なくなったと言える。

 内閣の国家戦略室も先ごろ発表した「革新的エネルギー・環境戦略」に関連して、今年末までに「電力システム改革戦略」(仮称)をとりまとめる予定である。その内容は今回の公取委の提言を反映した内容になるものと予想される。

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