連載
» 2013年03月19日 09時00分 UPDATE

日本列島エネルギー改造計画(45)宮崎:電力の自給率を10年後に5倍へ、小水力・太陽光・バイオマスの3本柱

南国・宮崎は太陽のイメージが強いが、電力の世界では水力が盛んだ。九州の水力発電所の半分が集中している。その水量を生かした小水力発電に加えて、豊富な日射量と森林資源による太陽光とバイオマスを拡大中だ。2022年までに電力の自給率を5倍以上に引き上げる計画が始まる。

[石田雅也,スマートジャパン]

 宮崎県に水力発電所が多くあることは、九州以外の人には想像しにくいだろう。晴れのイメージが強いが、実際には雨も多く降る。日照時間は全国で第3位、降水量は全国で第2位である。九州電力の水力発電所で規模の大きいものはほとんどが宮崎県にあり、発電量の約半分を担っている(図1)。

suiryoku_kyuden.jpg 図1 九州電力の水力発電所。九州全域(左)と宮崎県(右)。出典:九州電力

 その中で最大の能力を発揮しているのが「小丸川発電所」だ。発電規模は120万kWにのぼり、国内の水力発電所の中でも最大級の発電能力を誇る。ただし通常の水力発電のようにダムから放出する水は外からは見えない。地下の水路を通って発電機に送られる(図2)。いわゆる「揚水発電」の大規模な実例である。

 揚水発電は夜間の余剰電力を使って下のダムから上のダムへ水を引き上げ、それを昼間に放水して発電機を回す。特に夏の電力の供給力を高めるのに有効な方法である。

komarugawa.jpg 図2 「小丸川発電所」の揚水発電。出典:九州電力

 小丸川発電所の上下のダムの落差は650メートルもあり、その間を2.8キロメートルの地下水路でつないでいる。中間には16階建てのビルに相当する高さ48メートルの地下発電所が造られていて、上のダムから流れてくる水力を使って4台の発電機を回し、合計120万kWの電力を作り出す。

 一方では通常の水力発電所も県内で数多く稼働している。ダムに貯えた大量の水を放出して発電する方法だが、河川の自然環境を守るために、発電時でなくても一定量の水を流し続ける必要がある。

ranking_miyazaki.jpg 図3 宮崎県の再生可能エネルギー供給量(2010年3月時点)。出典:千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2011年版報告書」

 この少量の水流を使った小水力発電の取り組みも進んできた。「維持流量発電」と呼ばれているもので、小丸川発電所から北西にある「上椎葉ダム」で3月1日から始まったところだ。発電能力は330kWで、通常の水力発電所に比べるとケタ違いに小さいが、自然環境に影響を与えない再生可能エネルギーとして全国でも注目を集めている。

 宮崎県は大規模な水力発電では圧倒的な規模を誇るものの、小水力発電の導入量はまだ少ない(図3)。今後は豊富な水資源を活用して、県内の各地に小水力発電の設備を広げていく計画だ。

 2013年2月に素案ができた「宮崎県新エネルギービジョン」では、小水力のほかに太陽光・太陽熱とバイオマスを加えた3つの領域に焦点を当てて、再生可能エネルギーの拡大戦略をまとめた(図4)。

 県内の電力使用量に占める再生可能エネルギーの比率は2010年度の時点では2.8%。これを2022年度までに5倍以上の14.8%へ引き上げることを目標にしている。特に大きく伸ばすのが太陽光発電で、規模を10倍の70万kWに拡大する計画だ。年間の発電量は8.6億kWhになり、これだけで県全体の電力使用量の10%近くをまかなうことができる。

strategy.jpg 図4 「宮崎県新エネルギービジョン」の基本戦略。出典:宮崎県環境森林部

 すでに2009年から「みやざきソーラーフロンティア構想」を打ち出して、メガソーラーの建設を推進してきた。その中でもユニークな取り組みは、日向灘に面した都農町(つのちょう)で見ることができる。1996年までリニアモーターカーの実験に使われていた線路をメガソーラーに転用するプロジェクトである。

 線路の高架上に約3.6キロメートルにわたって、1万3000枚の太陽光パネルを設置した(図5)。合計で1MW(=1000kW)の電力を供給することが可能だ。航空測量大手の国際航業グループが2011年3月に「都農第2発電所」として運転を開始した。一度は使命を終えた鉄道の線路が最先端のエネルギー供給基地に生まれ変わった。

tsuno2.jpg
tsuno2_panel.jpg 図5 「都農第2発電所」。出典:宮崎ソーラーウェイ

 さらにバイオマス発電では、王子製紙グループが県南部の日南市にある工場に木質バイオマスを活用した大規模な発電設備を導入する計画がある。同グループは製紙のために社有林を保有するなど大量の木材を扱っている。県内の森林から出る間伐材を含めて、未利用の木質資源をバイオマス発電の燃料として利用する。

 稼働開始は2015年3月を予定している。発電能力は25MWと国内最大級の木質バイオマス発電所になる。3本柱を中心に宮崎県の再生可能エネルギー拡大計画は着々と進み始めた。

*電子ブックレット「日本列島エネルギー改造計画 −九州・沖縄編−Part II」をダウンロード

2014年版(45)宮崎:「南国の特産品でバイオマス発電、サツマイモから鶏糞まで燃料に」

2013年版(45)宮崎:「降水量が日本一の県で水力を再生、古い発電所とダムの増改築に着手」

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.