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» 2013年04月26日 11時00分 UPDATE

自然エネルギー:水素もガソリンも供給、水素社会の前触れか

水素エネルギーがこれからどのような位置付けになっていくのか、現時点で予測することは難しい。将来、化石燃料が全く利用できない状態にもし至るならば、選択肢として水素が最有力だとはいえる。水素関連会社13社は、水素の製造技術や利用技術よりも、現時点ではインフラの研究開発を優先している。その一例が、ガソリンスタンド併設の水素ステーションだ。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 水素は未来のエネルギー源だといわれている。燃焼時に水蒸気のみを排出し、水を電気分解すれば得られる。原材料の循環が可能なうえ、無尽蔵だ。CO2とも無縁だ。歴史的に見ても、さまざまな化石燃料を使っていく中で、石炭、石油、天然ガスという具合に、次第に炭素が少なく水素が多い化合物が優位になってきた。究極は水素なのだろう。燃料本来の質も優れている。燃焼エネルギーが高く、宇宙ロケットに使われるほどだ。

 水素エネルギーに否定的な意見もある。水素は天然資源ではないため、何らかの方法で製造しなければならない。現在は、石油精製や製鉄などで副次的に発生する副生水素や半導体製造などに使われる製造水素が主流だ。副生水素は量こそ多いが、通常、自家消費されてしまう。製造水素は高い純度が求められるため、燃料源としてはコストメリットが薄い。そこで、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを用いた製造法に期待がかかる。化石燃料が利用しにくくなった将来にはこの手法が有望だと考えられているが、現在は研究開発段階にとどまっている。

 水素エネルギーに否定的なもう1つの意見はインフラが全く整っていないというものだ。大量に消費する燃料は、全てインフラが整備されている。ガソリンや都市ガスは、長年月をかけてインフラが整備されてきた。水素にはそれがほとんどない。

末端のインフラを作る

 水素インフラとしてどのような形がよいのか、現在はそれぞれの方式を検証している段階だ。

 例えば、これまでの水素ステーションは水素のみを扱い、車両などに供給してきた。JX日鉱日石エネルギーが2013年4月に建設した新しいタイプの水素ステーション「海老名中央水素ステーション」(神奈川県海老名市)は違う。通常のガソリンスタンドと併設することでさまざまなメリットを狙う(図1)*1)。「ENEOSサービスステーション Dr.Drive海老名中央店」内に建設した。図1右では、手前に燃料電池車(FCV)に向けた水素充填機が、奥に従来のガソリン計量器が写っている。

*1) 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と水素供給・利用技術研究組合(HySUT)の共同実証事業の一環として、日本で初めてガソリンスタンド敷地内での水素充填を行うもの。JX日鉱日石エネルギーが水素ステーションの建設・運営を担当する。

yh20130426JX_station_590px.jpg 図1 水素ステーション。出典:JX日鉱日石エネルギー

 今回の水素ステーションでは、水素をガソリンと同じように補充する。水素は専用のトレーラーで運び込み、ステーションで蓄圧器(ボンベ)に貯蔵する仕組みだ*2)。製造場所とステーションが異なるため、オフサイト式と呼ばれる。

 オフサイト式を採ると、ガソリンのサプライチェーンと似たインフラが出来上がる。製油所などで大量生産した水素を輸送する供給体制に適しており、燃料電池車の普及期に向いていると考えられている。

*2) JX日鉱日石エネルギーの中央技術研究所・水素出荷実証設備(横浜市中区)から川崎重工業の専用トレーラーで輸送する。蓄圧器は国内で初めてカーボンファイバー複合容器を用いた。サムテックが製造した容器だ。

 ステーションの水素供給能力は毎時300Nm3、これは1時間当たり5〜6台の燃料電池車に対応できる能力だ。充填時間は約3分と短い。ガソリン並みだ。

 海老名中央水素ステーションでは、水素供給設備の低コスト化も試みた。インフラとして広く普及させるのなら、低コスト化は避けて通れない。

 具体的には、供給設備を製造する工場で機器や配管一式をあらかじめ標準規格コンテナ内にセットしてしまう。設備が小型になり、ステーションでの設置工事期間を短縮できる。コスト削減にもつながる。量産時に有益な技術だ。

 JX日鉱日石エネルギーは、今後、オフサイト式以外のガソリンスタンド一体型水素ステーションの運営も試みる。2013年5月には、同社が建設・運営を担う「神の倉水素ステーション」(名古屋市緑区)を開所する予定だ。ステーション内で、LPガスから水素を製造するオンサイト式だ*3)

*3) 同社は水素のみを扱うステーションを東京都杉並区、横浜市旭区、北九州市八幡東区に設置済みだ。それぞれ、オフサイト式、オンサイト式、パイプラインによる水素供給を採っており、神の倉水素ステーションが完成すると全ての組み合わせを検証できることになる。

「水素元年」はいつなのか

 水素インフラの整備を進めているのは、JX日鉱日石エネルギーだけではない。2011年の段階で「燃料電池自動車の国内市場導入と水素供給インフラ整備に関する共同声明」を発表した自動車メーカー3社とエネルギー事業者10社が共同で取り組んでいる。

 目標は明確だ。自動車メーカー3社は2015年に4大都市圏を中心とした国内市場に燃料電池車の量産車を導入し、一般ユーザーに販売する。エネルギー事業者10社は、水素供給業者として、2015年までに100カ所程度の水素供給インフラの先行整備を目指す。

 13社は以下の通り。JX日鉱日石エネルギー、出光興産、岩谷産業、大阪ガス、コスモ石油、昭和シェル石油、西部ガス、大陽日酸、東京ガス、東邦ガス、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ。

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