電力を無駄なく使うスマートハウス、見える化の次はスマートハウス(1/2 ページ)

高度なスマートハウスを実現するには電力の制御・変換技術や、各種センサー技術など高度な技術開発が必要だ。大手電機メーカーが単独で開発する他、国のプロジェクトとして推進する動きが続いている。そうしたなか、各社が自由に技術を持ち寄って作り上げていく開発手法が深まっている。

» 2013年05月07日 11時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 スマートハウスに必須の機能とは何か。それは時々刻々と変わる宅内外の電力状況を反映して、宅内の電力を制御することだ。第一段階は電力の見える化、第二段階は宅内の電力利用の最適化、第三段階は地域の電力需給状況を反映した宅内の電力利用の最適化だ。第三段階まで進むとスマートグリッドが実現したことになる。先行きが見えない電力事情や、再生可能エネルギーの普及、電力自由化が控えており、第二段階、第三段階のスマートハウスの必要性が今後高まっていく。

 村田製作所とdSPACE Japan、スマートエナジー研究所の3社は、横浜市においてこのような次世代型スマートハウス向けの実証実験を開始した。

 2013年4月26日、横浜市西区の住宅展示場tvkハウジングプラザ横浜の敷地内に、横浜スマートコミュニティ*1)が企画したスマートハウス「スマートセル」(図1)*2)が完成、3社はスマートセル内に実証実験用のシステムを設置した。実証実験を通じてシステムの性能や信頼性評価に加えて、ユーザーニーズの把握も進めるという。

*1) 横浜スマートコミュニティは、自然エネルギーを生活に採り入れ、活用する技術を確立するための取り組み。82社と5つの研究団体、6人のアドバイザーが参加する。今回の3社もメンバーである。公的機関の支援に頼らず、参加企業が技術や資材を持ち寄って対等な関係で実証実験を行う点に特徴がある。スマートエナジー研究所の中村良道氏の構想に従った取り組みだ。2010年の福岡県のコミュニティが先行し、横浜や長崎県の取り組みが続いた形である。なお、経済産業省が選定した「次世代エネルギー・社会システム実証地域」の4地域の1つ、横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)とは独立している。

*2) スマートセルは、横浜スマートコミュニティが計画した実証実験用のスマートハウス。3社以外の参加社も、太陽光照明や空調、断熱、高機能建材などの実証実験を並行して進めている。今後、同一立地で2棟のスマートハウスを計画している。

図1 スマートセルの外観。2階建て、総床面積約60m2。出典:dSPACE Japan

実証実験の対象は2つの新技術

 3社の実証実験では2つのシステムの動作を検証する。スマートハウスに必須の機能を実現する次世代スマートハウス向けエネルギーシステム(次世代システム、図2)と、スマートハウスの付加価値ともいえるワイヤレス見守りシステムだ。

 次世代システムの役割は、電力の制御と変換だ。スマートセルには太陽光発電システムと蓄電池、電気自動車(EV)向けの充電器が設置されている。一日当たりの宅内の消費電力を最も少なくするという目標が仮にあったとしよう。その場合、太陽電池の出力と、宅内の消費電力を比較しながら、蓄電池を制御しなければならない。

図2 次世代システムの外観。出典:村田製作所

 さらに地域の電力状況を改善するという目的があるなら、地域の天気予報や電気予報、複数のスマートハウスを結ぶクラウド情報によって、系統電力のピークを抑制(ピークカット、ピークシフト)し、各スマートハウス間で電気自動車への充電時間帯が重ならないようにするなどの制御も加わってくる。

 次世代システムは宅内の電流をどの方向に流すかを制御する(図3)。太陽電池と蓄電池は直流を利用し、系統電力と宅内の家電製品は交流である。電圧も異なる。このため、次世代システムには、直流直流変換(DC-DC変換)や同じく直流交流変換(DC-AC変換)をそれぞれ双方向に実行する機能を持たせた。

 次世代システムは、HEMS(Home Energy Management System)のインタフェース機能を利用できる。このためHEMSに対応するホームサーバなどから、どの電力をどの家電に振り分けるかといった指令を直接受け取ることが可能だ。これにより電流のより効率的な制御が実行できる。

図3 スマートセル内の構成。出典:村田製作所

 次世代システムの出力は3kW。これは系統連系と停電時の自立運転という2種類の用途を合わせた値だ。入力は2系統あり、2つの太陽光発電システムを同時に処理できる。太陽光発電システムと燃料電池システムをそれぞれ1つずつ制御してもよい。蓄電池の容量は2kWhだ。

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