石炭火力のCO2排出量を10%以上削減、バイオマス燃料も混焼電力供給サービス

発電事業者のJ-POWERが広島県で運営する石炭火力発電所の設備を新型に更新して、CO2排出量を10%以上削減する計画だ。さらにバイオマス燃料を石炭と混焼することで削減率の改善に取り組む。2014年6月から工事を開始し、6年後の2020年9月に運転を開始する予定である。

» 2013年05月17日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 J-POWER(電源開発)は1967年から広島県の竹原市で「竹原火力発電所」を運営してきた(図1)。現在は1号機〜3号機が石炭を燃料にして発電を続けているが、最も古い1号機は運転開始から46年を経過した。CO2排出量の問題もあり、2号機と合わせて新型に更新する。

図1 設備更新後の「竹原火力発電所」の全景(右端が新1号機)。出典:J-POWER

 1号機と2号機を合わせると発電能力は60万kWで、新たに導入する「新1号機」も同じ60万kWを予定している。大きな違いは石炭火力で問題になるCO2や硫黄・窒素酸化物などの排出量を大幅に削減できる点にある。

 CO2排出量は最も少ない3号機(1983年に運転開始)と比べて約4%、最も多い2号機(1974年に運転開始、1995年に石油から石炭に転換)と比べると約14%も少なくなる。硫黄・窒素酸化物も大幅に減少する見込みだ(図2)。

図2 「竹原火力発電所」の設備更新の概要。CO2排出量(上)と環境保全対策(下)。出典:J-POWER

 新1号機には環境保全対策として、各種の最新技術を採用する(図3)。発電効率を高めるために、蒸気タービンを高圧・高温で利用できる「超々臨界圧(Ultra Super Critical)」という先端技術を導入。合わせて排ガスから硫黄酸化物を回収する「排煙脱硫装置」も備える。さらにバイオマス燃料を石炭に混ぜて使用することでCO2排出量の削減率を高める。

図3 新1号機の設備構成と発電処理の流れ(画像をクリックすると拡大)。出典:J-POWER

 J-POWERは発電設備の更新にあたって、法律で定められている環境影響評価を実施中だ。問題なく国の認可を受けることができれば、1年後の2014年6月から工事を開始して、2019年9月から試運転に入り、2020年9月から営業運転に移行する計画である。

 最近では燃料費の安い石炭火力発電に注目が集まり、CO2排出量を抑制する技術の開発が国内で急速に進み始めた。J-POWERが導入する新1号機のCO2排出量は電力1kWhあたり0.766kgに減る見通しで、2010年に電力中央研究所が算出した石炭火力の標準的なCO2排出量0.864kgよりも10%以上少なくなる。

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