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» 2013年05月17日 15時00分 UPDATE

キーワード解説:燃料電池自動車に欠かせない「水素ステーション」

水素はこれまで広く一般に利用されたことがないエネルギー源だ。このため、将来のインフラ整備を目指して、さまざまな方式の開発が進んでいる。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 水素は再生可能エネルギーで得られた電力をたくわえる「媒体」として役立つ(図1)。いわば電池のようなものだ。なぜだろうか。水素は天然資源ではないため、何らかの方法で作り出す必要があるからだ。製造時の電力を再生可能エネルギーでまかなう形が、将来は有望だと考えられている*1)

*1) 水を電気分解することで水素を限りなく製造できるものの、現在広く採用されている量産手法は石油化学工業や製鉄などで副次的に発生する水素(副生水素)である。

yh20110512Toyota_z1_590px.jpg 図1 米Toyota Motor Salesが2011年にカリフォルニアに設置した水素ステーション。パイプラインを使う米国初の施設だ。出典:米Toyota Motor Sales

貯蔵はどうする

 水素のもつエネルギー量は大きいといわれる。確かに重量1kg当たりでは天然ガスやガソリンの3倍もある。

 水素の欠点はエネルギー密度が低いことだ。常圧の水素ガスは「希薄」であり、体積1L当たりでは天然ガスの約3分の1、ガソリンと比較すると約2900分の1の熱量しかない。

 そこで水素を圧縮するか、液化することになる。液化すると体積は800分の1に減少し、エネルギー密度が高くなるものの、ガソリンの28%の熱量にとどまる。さらに−253℃という極低温に保たなければならない。この温度を維持するためにもエネルギーを要する。

 このようなことを考えると、液体水素は宇宙開発用途などごく限られた場面だけに利用し、一般に広く使うのであれば圧縮してタンクに貯蔵することが得策だろう*1)

*1) パラジウムなど水素を自らの体積の約1000倍も吸収する水素吸蔵合金が見つかっている。このような合金の種類は数十種類に及ぶ。水素吸蔵合金を利用すれば、液体水素よりも高い密度で水素を貯蔵できる。ただし、一般に金属の重量がかさむため、大量の水素を消費する移動体には適さず、マグネシウムなどの軽量な金属の利用が研究されている。重量が問題にならない定置式の貯蔵には適する可能性がある。

どうやって送り届けるか

 ただし製造・貯蔵しただけは使えない。天然ガスを地下から採取してたくわえるだけでは、使えないことと同じだ。供給するインフラが必要不可欠だ。

 水素についてどのようなインフラの形が最も優れているのかは分かっていない。そこで、現在エネルギー源として広く使われているガスの例を2種類紹介する。

 都市ガスを扱う東京ガスの場合、マレーシアやオーストラリアから、タンカーでLNG(液化天然ガス)を輸入、運び入れたLNGを地下タンクに貯蔵する。その後、工場で一定の品質のガスに精製し、高圧導管(パイプ)に送る。途中のタンク(球形のガスタンク)に貯蔵後、中圧導管を通り、一戸建てほどの広さの整圧所で低圧導管に送り、オフィスや家庭に届く。

 プロパンガスでは状況が異なる。国外から輸入して1次基地に貯蔵するところまでは同じだ。その後タンクローリーで2次基地に送られ、小売業者が充填所でボンベにガスを充填。その後、軽トラックなどで直接需要家(消費者)に送り届ける。つまりほとんど導管を利用していない。

 なぜ供給手法が異なるのか。需要家がぽつぽつと分散している場合はボンベが適する。導管を設置する初期コストが過大になるからだ。水素は分子量が小さく、微細なすき間から漏れやすい。長大なパイプを利用した場合、漏出量が多くなってしまう。従って水素導管は他のガスよりも不利だ。

 どのような供給方法が水素に適するのか、水素を製造する手法にも依存する。現時点ではごく限られた工場で量産しているため、大需要家が工場から近距離にある場合は導管が、そうでない場合はボンベを利用している。将来再生可能エネルギーによって、需要地ごとに水素を製造できるようになれば、導管を利用する比率がより高まるだろう。

燃料電池車に供給する

 次は最終的な供給手法だ。水素の需要は都市ガスやプロパンガスとは異なる。現在拡大が予測できる最大の需要は燃料電池車だ。

 2011年、自動車メーカー3社とエネルギー事業者10社が共同で「燃料電池自動車の国内市場導入と水素供給インフラ整備に関する共同声明」を発表している。この声明は燃料電池車と供給インフラについてのものだ。自動車メーカー3社(トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ)*2)が2015年に4大都市圏を中心とした国内市場に燃料電池車の量産車を導入し、一般ユーザーに販売する。

*2) スズキは燃料電池車、燃料電池二輪車の研究開発を続けているが、共同声明には加わっていない。

 エネルギー事業者10社(JX日鉱日石エネルギー、出光興産、岩谷産業、大阪ガス、コスモ石油、昭和シェル石油、西部ガス、大陽日酸、東京ガス、東邦ガス)は、水素供給業者として、2015年までに100カ所程度の水素供給インフラ(水素ステーション)の先行整備を目指す。東京、名古屋、大阪、北九州という4大都市を結ぶ道路上にインフラを集中させる計画だ。

 水素ステーション自体もさまざまな方式を並列して設置しているところだ。導管を利用するもの、タンクローリーを利用するものという輸送方法の違いが1つ。もう1つは、既存のガソリンスタンドに併設するもの、水素専用のステーションを設けるものという区別だ。

 インフラの初期コスト、運用コストを考えると、タンクローリーで輸送し、ガソリンスタンドに併設するタイプが最も適すると考えられるが、燃料電池車が将来どのように利用されるのかはっきりしていないため、各種手法を漏らさず調べている。

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