連載
» 2013年06月04日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2013年版(10)群馬:利根川の流域に広がる水力発電、世界最大級の揚水式から小水力まで

山と川に恵まれた群馬県で新しい水力発電の取り組みが進んでいる。世界最大級の揚水式による発電所の建設現場の近くでは、同じダムの水を使った小水力発電が始まった。加えて太陽光とバイオマスの発電設備も増え始めて、3種類の再生可能エネルギーがそろって拡大中である。

[石田雅也,スマートジャパン]

 日本の河川の中で流域が最も広いのは、関東の北部を流れる利根川だ。太平洋につながる巨大な川を上流にさかのぼると、最後は群馬県の山岳地帯にたどり着く(図1)。支流を含めると群馬県のほぼ全域に利根川の豊富な水が流れ、ダムや用水路が数多く設けられている。

tonegawa.jpg 図1 利根川の流域と主なダム(画像をクリックすると拡大)。出典:国土交通省関東地方整備局

 群馬県庁によると、県内には水力発電所が76か所もある。再生可能エネルギーの導入量を見ても小水力発電が圧倒的に多く、全国で4番目の規模に拡大している(図2)。

ranking2013_gunma.jpg 図2 群馬県の再生可能エネルギー供給量。出典:千葉大学倉阪研究室、環境エネルギー政策研究所

 今から4年ほど前に建設中止が決まって話題になった「八ツ場(やんば)ダム」の工事現場も群馬県の利根川流域にある。最近になって工事再開に向けた動きが始まったようだが、ほかにも新しい水力発電のプロジェクトが大規模から小規模まで、利根川の水資源を活用する形で着々と進んでいる。

 中でも規模が大きいのは「神流川(かんながわ)発電所」である。東京電力が1997年に建設を開始して、完成は2015年度以降を見込む長期の大型プロジェクトだ。この水力発電所は「揚水式」と呼ばれるタイプで、夜間の余剰電力を使って下のダムから上のダムに水をくみ上げ、日中の電力需要が多い時間帯に放流して発電する(図3)。

kannagawa.jpg 図3 「神流川発電所」の揚水発電に利用する2つのダムのうちの下部ダム。出典:東京電力

 すでに2基の発電機が運転を開始していて、計画する6基すべてが稼働すると発電能力は282万kWに達する。国内では最大の水力発電所になり、揚水式としては世界でも最大級の規模になる予定だ。ちなみに原子力発電所で唯一稼働している関西電力の大飯発電所が2基で236万kWである。

 実際に発電所のスケールも大きい。上部と下部にある2つのダムをつなぐ水の導管は直径6.6メートルで、長さは約1キロメートルに及ぶ。水が流れる高低差は約650メートルもあって、地下に設置した6基の発電機が水流から電力を作り出す仕組みだ。

 ただし揚水式の水力発電は火力などによる余剰電力を利用して水をくみ上げるために、通常は再生可能エネルギーとはみなされない。神流川発電所のすぐ近くでは別の水流を使って小水力発電も実施している。2011年11月に東京電力が運転を開始した「虎王(とらおう)発電所」である(図4)。

 ダムの上流から神流川発電所を迂回する水路を造り、一定量の水を流し続けて発電機を回す。発電規模は270kWと小さいものの、揚水式と違って常に発電できる点がメリットだ。年間の発電量は160万kWhを見込み、一般家庭で約450世帯分の電力を供給することができる。

toraou.jpg
toraou2.jpg 図4 「虎王発電所」の小水力発電設備。出典:東京電力

 最近ではダムに貯めた水の一部を流して下流の環境を保護することが義務づけられている。従来は放流するだけで発電に使われることはなかったが、利用価値の高い再生可能エネルギーとして小水力発電を導入する事例が増えてきた。ダムがある場所では必ずと言ってよいほど実現できるため、これから数多くのダムの周辺に広がっていくだろう。

 群馬県では2013年1月に「電源群馬プロジェクト」をスタートさせた。豊かな水に加えて太陽光とバイオマスを活用した発電設備を早期に拡大することが目的だ。特に自治体や民間企業が所有する施設や遊休地を発電事業者とマッチングさせることに力を注ぐ。

 その先行事例になったのが、県の中部にある榛東村(しんとうむら)の「ソフトバンク榛東ソーラーパーク」である(図5)。村が所有する3万6000平方メートルの土地に、2.4MW(メガワット)の太陽光発電設備を導入して2012年7月から運転を開始した。これを皮切りに2013年に入ってから各地でメガソーラーの建設計画が始まっている。

shinto_megasolar.jpg 図5 「ソフトバンク榛東ソーラーパーク」。出典:SBエナジー

 バイオマスの分野でも大規模な発電所が動き出した。群馬県を代表する榛名山(はるなさん)のふもとで、2011年9月に「吾妻(あがつま)木質バイオマス発電所」が発電を開始した(図6)。県内を中心に年間に約13万トンの木質資源を集約して燃料に利用する。

 発電能力は13.6MWもあり、木質バイオマスだけを燃料に使う発電設備としては国内有数の規模になる。年間の発電量は8500万kWhに達し、一般家庭で2万4000世帯分にのぼる大量の電力を供給することができる。

agatsuma_mokushitsu.jpg 図6 「吾妻木質バイオマス発電所」。出典:吾妻バイオパワー

 群馬県は2021年度までにバイオマスの利用率を大幅に向上させる10年計画を実行中である。農業・畜産・木質・食品・排水の5項目で未利用の資源を分析して、燃料などに再利用する施策を進めているところだ。中でも畜産資源と木質資源の利用可能量が多く、畜産業や林業と連携した再生可能エネルギーの導入プロジェクトが山間部を中心に広がりつつある。

*電子ブックレット「エネルギー列島2013年版 −関東・甲信越編 Part1−」をダウンロード

2015年版(10)群馬:「山のふもとにメガソーラー、首都圏へ再生可能エネルギーを送る」

2014年版(10)群馬:「日本で最高に暑い地域に、先駆けのメガソーラーが集まる」

2012年版(10)群馬:「バイオマスを徹底活用、畜産資源から生ごみ・排水まで」

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.