「地下水の熱」を地下水の浄化に利用、年間2万kWhの省エネが可能に省エネ機器

地下水から汚染物質を取り出す浄化処理。運用費用は少ないが、10年以上を要する。清水建設は、地下水から熱エネルギーを取り出すことで、浄化処理の速度を上げ、同時に空調費用を削減する技術を開発した。

» 2013年06月11日 13時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 大量に利用される地下水。だが、地下水の能力が十分引き出されているとはいえない。ここでいう地下水の能力とは、地下水が持つ熱だ。

 地下水は年間を通じてほぼ一定の温度が保たれているため、気温との温度差が生じる。この温度差からエネルギーを取り出せるはずだ。だが、温度差は小さい。発電が可能な温度差ではない。他の利用法はないだろうか。

 清水建設は地下水の熱エネルギーを補助的に使うことで、地下水浄化処理が素早く進み、加えて空調用電力を削減できる技術「ヒートポンプ併設型VOC汚染地下水浄化システム」を開発した。1.5m×0.7mのヒートポンプを既存の汚染水浄化システムに取り付けることで利用できる。

地下水の熱と空調を結び付ける

 地下水は工場や施設が排出する物質によって汚染されてしまうことがある。地下水は長い時間をかけて循環しているため、自然にまかせていては汚染物質が長期間残留してしまう。そこで浄化処理が必要になる。

 地下水の浄化処理とは、汚染物質が広がらないよう、地下水をひたすらくみ上げて処理していくもの。10年以上を要することも珍しくないという。例えば石油などに由来する揮発性有機化合物(VOC)で地下水が汚染されていたとしよう。従来の処理方法は、地下水をくみ上げ、ぶくぶくと気泡を加えてVOCを揮発させる。いわゆる曝気処理だ。曝気処理は温度が高いほど早く進む。

 清水建設の技術はどのように生きるのか。夏期と冬期では動作が違う。夏期には地下水の熱エネルギー(冷熱)をヒートポンプによって取り出し、空調用空気を冷やす。すると空調用の電力を削減できる。さらに地下水の温度が5〜7℃も上がる。さきほどの説明のようにVOCの処理は温度が高いほど進みやすいため、浄化処理にも役立つ。

 冬期は逆だ。揚水後にすぐVOCの除去処理を行い、その後、ヒートポンプを使う。VOCの除去処理スピードを高めることはできないが、空調用の電力は削減できる。

 この仕組みを取り入れることで、地下水の揚水量1日1トンに付き、年間65kWhの省エネが可能になるという。これを1日337トンの地下水をくみ上げる典型的な現場に当てはめると、年間で2万2106kWhの省エネになる。初期投資(ヒートポンプの取り付け)を5年弱で回収できる計算だという。加えて夏期は、VOCの除去効率が10%向上する。

 清水建設は、地下水の曝気処理を実施中の現場に対して、今回の技術を採用したシステムを2013年度内に10基提供したいという。

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