40年後の目標を2014年に達成、米国で5.79セントと非常に安価なメガソーラー自然エネルギー

米国南部、メキシコ国境に近い「Macho Spring Solar」は、非常に安価な発電が可能だ。1kWh当たりの売電価格は5.79セントであり、これは日本が2050年に目標としている額よりも安い。石炭火力発電をも下回る額だ。

» 2013年06月17日 15時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 1MWh当たりの購入価格が57.9米ドル(5.79セント/kWh)と非常に安価なメガソーラーが2014年にも米国で登場する。日本では2050年に7円/kWh以下を目標(NEDOの太陽光発電ロードマップPV2030+)としており、40年近くも先に目標を達成されてしまう形だ。

 このメガソーラーは、米国ニューメキシコ州の最南部、ルナ郡に計画中の「Macho Springs Solar」。出力は50MWで、2013年7月に建設を開始し、2014年5月の運転開始を予定している。

 同メガソーラーは州土地信託から40年契約で200haの土地を賃借して建設する。州は40年間で4000万米ドルの賃借収入を得る。

 図1では国立再生可能エネルギー研究所(NREL:National Renewable Energy Laboratory)が作成した年間の太陽光強度を示した図上に位置を示した。太陽光の強度が最も高い地域にあることが分かる。

図1 Macho Springs Solarの位置(黄色い四角)。出典:NRELが公開した資料を編集

 同メガソーラーが計画された理由はこうだ。ニューメキシコ州の発電事業者であるEl Paso Electricは2011年にピーク電力をカバーするための新しい電力契約を募集していた。これに応募したのが、メガソーラーを開発する米Element Power Solarだ。

 同州では政府機関(New Mexico Public Regulation Commission)が電力の売買に関する契約(電力購入契約:PPA、Public Purchase Agreement)を審査する仕組みになっており、2013年1月に20年契約の内容を公開。ここで57.9米ドルという数値が明らかになった(図2)。

図2 PPAに関する承認文書(Case No.12-00386-UT)の一部。出典:New Mexico Public Regulation Commission

 PPA締結直後、Macho Springs Solarの事業をFirst SolarがElement Power Solarから買収。First Solarは同社のCdTe薄膜太陽電池を利用したメガソーラーを立ち上げる。

 5.79セント/kWhという価格は、2014年に完成するメガソーラーとしては非常に安価だ。料金を安くするために、ニューメキシコ州民に負担が掛かっているということでもない。New Mexico Public Regulation Commissionは、月に685kWhを消費する一般家庭のモデルに当てはめた例を承認文書中に示している。その場合、月額0.22米ドルの料金値上げにとどまるという。電気料金が月額89米ドルのモデル家庭では0.2%の値上げにすぎないということだ。

 これほど安価な料金設定が可能な理由は何だろうか。エネルギー関連の調査会社である米Greentech Mediaは、生産税額控除(PTC、Production Tax Credit)に理由の一部があると分析している。ニューメキシコ州内の生産税額控除制度を利用すると、発電所では運転開始後10年間、平均2.7セント/kWhの免税が受けられる。ただし、控除を考慮しても8.49セント/kWhとなり、これは米国における石炭火力発電所の12.8セント/kWhよりも安価であるという。

 なお、ニューメキシコ州は日本で採用された固定価格買取制度(FIT)ではなく、自然エネルギー割り当て義務(RPS)/クォータ政策を通じた再生可能エネルギーの普及を狙っている。

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