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» 2013年06月19日 13時00分 UPDATE

節電対策として期待がかかるガス空調システム:第1回 省電力性や環境性能が高いのはなぜか

 空調設備は電力だけで動く――このような思い込みは正しくない。ガスを使った空調機器が広く使われているからだ。ガス空調にも複数の種類がある。なかでも重要なのがガスエンジンヒートポンプ式(GHP)だ。

[日本LPガス協会,スマートジャパン]

 今回の連載では省電力性が高く、出力が大きなGHPについて解説する。

 GHPとは、ガス燃料でエンジンを動かして冷媒を圧縮させ、冷暖房を行う空調システムである。ガスを燃焼させているものの、冷房にも役立つ。

 GHPは、電気エアコンと同じくオフィスをはじめ、学校、病院、飲食店、美容院、スーパーマーケット、工場など、日本全国、幅広い分野において小空間から大空間までさまざまなニーズに対応している。

 GHPが注目を集めているのは電気だけで動くエアコンと比べて大幅に電力消費量をカットすることができるからだ。夏場の電力ピークカットに貢献し節電対策に役立つ。第1回ではGHP導入のメリットについて紹介していく。

省電力性がGHP導入の最大のメリット

 GHPは省電力性が高い。どのような意味だろうか。複数ある。まずは、電力をあまり使わず、消費電力のピークカットに役立つことだ。このようなメリットが別のメリットにつながっていく。契約電力の引き下げだ。電気料金の固定費を一部削減できる。

(1)省電力性能・ピークカットに貢献

 図1から、オフィスビルや商店では電力消費量の多くを空調が占めていることを見て取ることができる。

yh20130619LPGAS_zu1_590px.jpg 図1 夏のピーク時の電力消費の内訳。業種別のデータを示した。出典:資源エネルギー庁

 GHPを導入した場合、エネルギー消費のほとんどはガスエンジン部分で生じる。電力も必要だが、ファンなどの補機類以外には使用しないため、省電力だといえる。実際に電力消費量は20馬力相当のシステムでも約1kWとごくわずかである。この結果、省エネルギーと省電力の相乗効果によって、電気エアコンと比較すると、消費電力は通常機で約1/10に下がる。発電機能付きのものでは約1/100に低減する(図2)。よって、GHPを導入すれば、特に夏場は電力需要の3割以上を占める冷房に使用する電力を削減できるとともに、電力ピークカットに貢献し、電力需要の平準化といった効果も期待できる。

yh20130619LPGAS_zu2_482px.jpg 図2 電気エアコンとGHPの消費電力量比較。出典:日本LPガス協会

(2)契約電力を抑制できる

 GHPは消費電力が少ないため、受変電設備の削減、契約電力の抑制ができる。電気エアコンを設置した場合、夏場のピーク電力消費量が大きくなり電力料金への影響が大きくなってしまうが、GHPを導入することで抑制が可能である(図3)。

yh20130619LPGAS_zu3_386px.jpg 図3 年間を通じた電力料金の推移。電気エアコンとGHPの比較。出典:日本LPガス協会

GHPは環境性能も高い

(3)エネルギー効率が高いガス

 GHPの魅力は省電力性の高さだけではない。環境性能も高い。エネルギー効率が高く、CO2排出量が少なくなるのだ。

 電力をあまり使わない代わりにガスを使うのなら、結局、消費エネルギーが少なくなるかどうかは分からない、このような疑問が生じるのはもっともだ。電気とガスについてエネルギー効率の観点から比較してみよう。

 電力は効率があまり高くない。なぜだろうか。発電のために化石燃料を使ったとしよう。すると、化石燃料がもつエネルギー(一次エネルギー)を全て取り出すことはできない。そもそも発電時に未利用廃熱となって無駄になる部分があり、送電時のロス(電気抵抗)もある。結局、事務所や家庭で有効に使用できるのは、元の37%程度のエネルギーにすぎない。ガスの強みはここにある。ガスは輸送ロスがほとんどなく、もともとガスが持っていたエネルギー(一次エネルギー)を100%近く使用することができる。すなわちエネルギーの生成から消費段階におけるムダが少ないのである(図4)。

yh20130619LPGAS_zu4_590px.jpg 図4 電気とガスの配送時におけるエネルギーロスの比較。出典:日本LPガス協会

(4)CO2排出量が少ないLPガス

 燃料にLPガスを選択した場合、2つメリットがある。

 第1のメリットはガスのクリーン性だ。

 LPガスの生産・輸送段階から燃焼時までのCO2排出量が少ない。排出係数を比較してみよう。石油を1とした場合の指数換算で0.89となる。石油や石炭と比べて約10%少なくなっており、都市ガスやLNGとほぼ同等の低い排出量だ(図5)*1)。呼吸機能や眼の粘膜に刺激を与えるSOx(硫黄酸化物)やNOx(窒素化合物)、ばいじんの排出はほとんどゼロである。

*1) 石油、石炭、LNG、都市ガスの出典は、「LPガスの環境側面の評価−エネルギー製造・利用のLCI(ライフサイクルインベントリ)分析−」当協会調べ2009年。LPガスの出典は「地球温暖化対策の推進に関する法律施行令の一部を改正する政令」2010年3月

yh20130619LPGAS_zu5_590px.jpg 図5 各エネルギーの排出係数。出典:日本LPガス協会

 第2のメリットはLPガスが災害対策に役立つということだ。

 LPガスは、需要家ごとに軒先在庫(ボンベ)をもつ「分散型エネルギー」である。災害発生時にガスの供給がたとえ遮断された場合でも、個別に調査・点検を行うことで都市ガスや系統電力に比べて相対的に早く復旧させることができる。

 近年、災害時の対策として、空調や給湯など日常生活におけるガス消費設備と自立分散型エネルギーとしての利点を生かした「災害対策用バルク供給システム」との併設利用も推奨されている(図6)。

yh20130619LPGAS_zu6_590px.jpg 図6 災害対策用バルク供給システム(自立分散型エネルギー:LPガスの利点。出典:日本LPガス協会

第2回「快適で省エネにも向く」

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