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» 2013年07月26日 09時00分 UPDATE

自然エネルギー:住宅用太陽電池の進むべき道を行く、出力だけでなく4割の軽量化も

ソーラーフロンティアは同社のCIS太陽電池の開発の方向性を広げた。従来、同一面積の太陽電池モジュールの出力(変換効率)を順次高めてきており、これは継続する。さらに住宅設置に適するよう薄型化、軽量化を進めた製品の開発・販売を開始した。設置工法にも工夫を凝らしている。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 政府が太陽光発電を普及させようとしているのはなぜだろうか。それは伝統的な原子力、火力、水力だけでは電力源としてバランスが悪いという結論に達したからだ。例えば現在フル稼働している火力は、燃料を購入しなければ発電できない。燃料コストは長期的に上昇する傾向にあり、変動も激しい。

 太陽光発電は導入時に費用が掛かるものの、20年間の運転中には発電用燃料が不要だ。「太陽電池の製造に掛かった電力は何年で取り返せる?」で紹介したように、太陽電池の製造から廃棄までに投入するエネルギーは1〜2年の発電で回収できる。つまり18〜19年の間、純粋に電力を生み出す計算だ。

 このような装置を設置する場所として最適なのはどこだろうか。屋根である。屋根は雨風をしのぎ、日光を遮る以外の役目を果たしていない「無駄」な空間だともいえる。地上設置型のメガソーラーが脚光を浴びているものの、太陽光発電の導入量が増え、固定価格買取制度(FIT)が廃止される将来を考えると、屋根で発電し、屋内で使うという組み合わせが最も優れていることが分かる。いわゆる電力の地産地消だ。

 このような未来を考えたとき、太陽電池に求められる性質はなんだろうか。低コストであることや高効率であることが真っ先に念頭に浮かぶかもしれない。見落とされがちなのが、建物の一部として自然に溶け込むということだ。まずは、軽く薄く、設置しやすい太陽電池が必要だ。軽く薄くあれば、架台や固定金具も少なくて済む。屋根への負担が減る。設置可能な屋根の種類も広がる。最終的には一般的な壁材や屋根材と同じように扱える太陽電池が主流になるだろう。

CIS太陽電池で軽量化

 このような着想はどの太陽電池メーカーでも持っているはずだ。実際に製品化を進めた企業が優位に立つだろう。

 例えばソーラーフロンティアは住宅向けの従来製品「SFシリーズ」よりも4割軽量化した製品「Solacis neo」を開発した。ガラス基板を使ったCIS太陽電池としては世界最軽量をうたう。1m2当たりの重量を16.3kgから10.2kgへと軽くしている。2013年11月に出荷を開始した後、2013年末までに同製品を20MW、2014年末までに100MWの生産を目指す。同社の生産能力は2014年末時点で約1GWであるため、1割を軽量モジュールが占めることになる計算だ。

 Solacis neoは薄型化も進めた。従来製品の約5分の1の厚みである(図1)。「薄型化のために、従来のアルミフレームを取り外し、軽量化のためにカバーガラス(強化ガラス)の厚みを3.2mmから2mmに変えた。基板ガラスも薄くした」(同社の取締役 専務執行役員 技術本部・生産本部管掌の栗谷川悟氏)。

yh200130726SF_thin_590px.jpg 図1 軽く薄いことをうたうSolacis neo。変換効率は100W品(初期品)の場合12.7%。

 太陽電池モジュールだけではなく、導入を容易にする設置工法も開発した。「クロスワン工法」と呼ぶ。同工法では従来のFF工法と比較して部品点数を大幅に削減し、屋根に開けなければいけない穴の数を減らした。このため、施工時間が短くなり、経済的で、屋根に与える負担が少なくなったという(図2)。

 図2では各工程に要する時間を分単位で表している。従来の6時間強の作業を4時間弱に短縮できるという。工程の内容は左から「地上作業」「墨出し」「屋根金具取付」「防水処理」「架台設置」「不陸調整」「アース線取付」「集電ケーブル取付」「太陽電池モジュール取付」である。

yh200130726SF_Xone_590px.jpg 図2 従来工法と新工法(下)の施工時間の違い

高効率モジュールも投入

 同社はこれまで従来品よりも高効率な太陽電池モジュールの量産のメドが立った段階で順次新製品を投入してきた。今回は出力を170Wに高めた「SF170-S」である(図3)。重量や寸法、厚みは従来のSFシリーズ(例えばSF160-S)と同じだ。SF170-Sの変換効率は量産されている多結晶シリコン太陽電池とほぼ同等の13.8%だという。

yh200130726SF_2products_590px.jpg 図3 2種類の新製品。Solacis neo(右)とSF170-S

 「当社のCIS薄膜太陽電池は、実設置環境で公称出力から計算した値よりも発電量が多くなる(図4)。今後は一層変換効率が高い製品の開発に取り組みながら、住宅メーカーと協力して、より屋根材や建材に近づいた製品の開発に取り組みたい」(栗谷川氏)。

yh200130726SF_kWh_590px.jpg 図4 メガソーラーに採用されたCIS太陽電池の発電電力量

 同社は補助金終了後、さらには固定価格買取制度終了後にも目を向けている。経済産業省が交付する2013年度の補助金(住宅用太陽光発電導入支援復興対策事業)が終了した後も「モジュール価格に加えて、システム価格の低減、(クロスワン工法などの)施工方法の改善によって、顧客側からは補助金がなくても十分に経済的に見合う商品作りができるよう心掛けている」(同社取締役 副社長執行役員の平野敦彦氏)とした。「欧州(の一部)ではグリッドパリティを達成している。このため従来の産業用、発電用に加えて住宅の屋根向けの需要も伸びると考えている」(平野氏)。

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