農業と太陽光発電の共存、宮崎で最適解を探る試み始まる自然エネルギー

地上設置型の太陽光発電システムを販売するLooopは2013年10月から宮崎大学との共同研究を開始する。研究テーマは農業と太陽光発電システムの共存である。農作物の生育や収量に与える影響と売電収入の釣り合いを取ることが目的だ。農業に使いやすい太陽光発電システム製品も発売する。

» 2013年10月02日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 地上設置型の太陽光発電システムを販売するLooopは、2013年10月から宮崎大学と共同研究を開始した。研究の目的は農業と太陽光発電システムの共存、ソーラーシェアリングだ。

 農地には光を遮るものが少ない。このため、地面に柱を立てて太陽電池モジュールを設置し、地面で植物を育て、上部で発電することが可能かどうかを調べる取り組みが続いてきた*1)。2013年4月には農林水産省が「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」という文書を公開(関連記事)。いよいよ共存が現実的になってきた。

 「(文書公開後)農業経営者からソラ―シェアリングにかかわる照会が多い。ソラ―シェアリングを実施した場合、農作物への影響を問われることも多い。ソーラーシェアリングの普及のためには、それに適した作物や栽培方法の研究が不可欠だ」(Looop)。

 宮崎大学農学部の霧村雅昭助教は、地域の未利用資源の有効活用と植物生産の完全制御をテーマとした研究を進めている*2)。ソーラーシェアリングについて同大学側に研究の意向があったことから、今回の共同研究につながったという。

 2014年3月末までを研究の第1期として、霧村研究室がソーラーシェアリングに適した作物や品種の選抜と栽培方法について研究を進める。Looopの研究チームは農地における太陽光発電システムの最適運用方法を研究する。システムの運用により、売電収入見込みがどのように変化するかといった研究だ。Looopは研究結果を新製品の開発に役立てる。

 Looopはソーラーシェアリングに利用できる地上設置型の太陽光発電システム「MY発電所キット 空中型」(出力12kW)を2012年12月に製品化している。「顧客からは架台の下で農業機械を使いやすい、作業性のよい製品や、太陽電池モジュールの角度を設定でき、作物を照らす光の量(遮光率)を変えられる製品が欲しいという要望があった」(Looop)。このため、今回の研究ではこの2点を改善したシステムを利用する。

 研究開始に当たり、出力11.2kWの同システムを「ソラシェア」と名付け、2013年10月2日から295万円でモニター販売を開始する。2013年11月から製品の販売を始める。

*1) このような取り組みは日本国内に限られるものではない。例えば、フランスAkuo Energyは農業と太陽光発電システムを共存させる取り組み「Agrinergie」を2008年に開始している。フランス本土の地中海沿岸の他、アフリカ、カリブ海などにあるフランスの海外県など15の拠点で合計65.99MWものプラントを運転中だ。花卉(かき)の栽培を中心としているが、養蜂(24MW、本土のPACA地域)やパッションフルーツ(1.8MW、アフリカのレユニオン島)の栽培などもある。

*2) 例えば太陽光発電や太陽熱発電、小水力発電と植物工場を組み合わせた植物生産システムがあり得るという。

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