地下鉄を停電時に動かす、東京メトロと日立が協力蓄電・発電機器(1/2 ページ)

日立製作所は鉄道用の蓄電池式回生電力貯蔵装置「B-CHOPシステム」を複数の顧客に提供している。このシステムを改良して、停電時に電力を供給できる「EM-B traction」を開発中だ。東京メトロの葛西駅で2014年1月から実験が始まる。

» 2013年10月09日 11時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 災害時の停電などに役立つ家庭用の蓄電池。もちろん家庭用だけではなく、オフィス用などさまざまな蓄電池が使われている。日立製作所と東京メトロはさらに新しい用途を開発中だ。停電時の鉄道の短距離移動に役立てる。

 「2013年3月から東京メトロと協力し、『EM-B traction』と呼ぶ地上に置く非常用バッテリー装置について机上で内容を検討してきた。まずは計算上、利用できることを確かめた」(日立製作所 交通システム社電力変電システム部)。2013年10月には、2014年1月に車両走行実験を開始することを発表した。「約1カ月で実験を終える予定だ」(東京メトロ)*1)

図1 東西線の地上走行区間と葛西駅の位置

 東京メトロの問題意識はこうだ。震災などによって鉄道への電力供給が停止し、復旧の見込みが立たないときの対応である。駅員が救援に向かい、乗客の安全を確保しながら駅まで歩いて避難させなければならない。駅間が短い部分であっても危険を伴うが、そうでない場合はより困難を伴う。もしも大規模な橋梁を含む区間で停電になったらどうすればよいのか。

 隣の駅まで走行できる電力を蓄電池から電車に供給できればよい。「日立製作所と共同で葛西駅周辺での実験を目指している」(東京メトロ)。東京メトロ東西線は南砂町駅と西葛西駅間で2.7kmと駅間が最も長くなる(図1)。線路が地上に出て荒川をまたぐからだ。

どのような電池システムを使うのか

 日立製作所はリチウムイオン蓄電池を組み合わせて大出力化した蓄電池式回生電力貯蔵装置「B-CHOPシステム」を実用化済みだ。「既に(国内外の)数件のユーザーに納入済みであり、回生電力の利用に役立っている」(日立製作所)。

 回生電力の利用とはどのような使い方だろうか。ある路線上で電車が減速すると、電車の運動エネルギーは熱に変わり、逃げてしまう。ここで、B-CHOPシステムを導入すると、運動エネルギーを電気エネルギーに変えて地上に設置した蓄電池にいったん保存できるようになる。加速する際にはB-CHOPシステムから電力を受け取る(図2)。100%の回生は不可能であり、架線からの電力と併用する形になるものの、本来必要だった電力量よりも少なくてもすむというメリットがある。

図2 回生電力の利用イメージ。出典:日立製作所
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