蓄電池をつなげたパワコン、太陽光の用途が大きく広がる蓄電・発電機器(1/2 ページ)

田淵電機は2014年1月に大容量リチウムイオン蓄電池を接続して使うパワーコンディショナー(パワコン)を製品化する。蓄電池の動作を3種類から選択でき、経済性や環境性、停電時の対応のうち、最も重視したい条件に合わせてシステム全体を自動的に運用できる。

» 2013年10月11日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 太陽電池モジュールが作り出す直流電流を、家庭内で利用できる交流電流に変換するパワーコンディショナー。これまでは変換効率や容量、製品寿命、コストなどが評価ポイントだった。このような状況が変わりつつある。パワーコンディショナーに新たな用途が開けてきたからだ。

 田淵電機は大容量リチウムイオン蓄電池と直接接続して使うパワーコンディショナー「アイビス(EneTelus Intelligent Battery System)」を開発した(図1)。太陽光発電システムを導入する家庭には、さまざまな理由から大容量蓄電池と同時に利用した場合のメリットが大きいからだという。

 「主な顧客はハウスメーカーやパワービルダー(建売住宅業者)などだ。2012年に大手家電メーカーにOEM供給を開始したシステム製品とほぼ同じ機能のものを自社ブランドで展開する形だ」(田淵電機)。「価格帯は販売を開始する2014年1月時点で公表する予定だ。アイビスに使っているパワーコンディショナーと同水準の製品は約30万円であり、これに電池との双方向変換機能に必要な部材と蓄電池本体のコストを上乗せした水準になるだろう」(同社)。全体の価格を左右するのはリチウムイオン蓄電池になる。

 図1はアイビスの製品構成だ。左側が専用のリチウムイオン蓄電池、右側がパワーコンディショナーだ。パワーコンディショナーは屋外に設置されることを想定しているため、「切れ目」よりも下は本体を支える架台である。架台の高さは500mm、全体の高さは1500mmだ。

図1 アイビスの製品構成。出典:田淵電機

動作モードは3種類ある

 機器の接続イメージは、パワーコンディショナーに太陽電池モジュールと蓄電池がそれぞれ独立につながっているというもの。パワーコンディショナーを家庭用の配電盤につなげて使う。

 蓄電池は太陽電池モジュールと異なり、いつ充電し、放電するかという制御がなければ有効利用が難しい。アイビスでは3種類のモードを付属の外付けリモコンで切り替えて使えるようにした。

 「ノーマルモード」は経済性(電気料金)を重視した動作モードだ。太陽光による発電が可能なときはなるべく売電し、炊事などのために家庭内で負荷電力が高くなる時間帯には負荷に応じて蓄電池から放電する。蓄電池への充電は比較的電力料金が安くなる深夜に進めるというものだ。

 時間帯によって動作が2種類ある。7〜23時の時間帯では、家庭内の負荷よりも太陽光発電の量が多いなら負荷を引いた全量を売電する。例えば太陽光で5.0kW発電し、家庭内で3.0kWを使うなら、2.0kWを売電する。太陽光が家庭内の負荷よりも少ないときは、2.0kWまでは蓄電池から放電する。2.0kWを超えた部分は系統から購入する。23〜7時は常時1.5kWで満充電になるまで系統から電力を購入して充電を続ける。これは東京電力の「おトクなナイト8」を想定した動作だ。おトクなナイト8では夜間料金が11.82円、昼間料金が30.87円に設定されている。

 「節エネモード」は自然エネルギーをなるべく使い、系統から購入する電力量をなるべく減らす動作モードだ。

 日中には家庭内負荷分を太陽光でまかない。さらに太陽光からの電力のうち最大1.5kWを使って蓄電池に充電する。これでも余った部分だけを売電する。例えば太陽光で5.0kW発電し、3.0kWを家庭内で消費するなら、1.5kWを充電に使い、0.5kWを売電する。夜間は最大2.0kWまで蓄電池から放電する。不足分は系統から購入する。

 「蓄電モード」は動作が最も単純だ。なるべく蓄電池がフル充電になるよう動作する。停電対策、災害対策を最優先したモードだ。日中は太陽光発電の余剰電力から、夜間は系統から、それぞれ1.5kWで充電を続ける。

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