でんき予報に使われる「最大電力」と「供給力」キーワード解説

東日本大震災を契機に全国各地で電力不足の可能性が高まり、電力会社は毎日の需給状況を知らせる「でんき予報」を開始した。当日の電力需要の最大値と時間帯を予想して、供給可能な電力に対するピーク時間帯の需要の比率を計算する。その元になる数値が「最大電力」と「供給力」である。

» 2013年10月11日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 電力会社がウェブサイトに掲載している「でんき予報」では、必ず「予想最大電力」と「ピーク時供給力」を表示している(図1)。この2つから計算した比率がパーセンテージで示されて、100%に近づくほど電力不足の可能性は高くなる。当日の需給状況がひと目でわかる重要な指標である。その元になる「最大電力」と「供給力」はどのような数値か。

図1 「でんき予報」の表示例。出典:東京電力

 まず最大電力だが、各電力会社の管内で使われる電力は時々刻々と変化している(図2)。このように変動する電力需要に対して、1時間ごとの平均値を計算する。その平均値が1日のうちで最も大きくなった時の数値が最大電力だ。

 ただし瞬間的なピークは最大電力よりも大きくなり、そのピークに対応できるだけの電力を供給できないと停電になってしまう。変動幅を考慮すると、最大電力に対して3%以上の余裕を確保することが望ましい。夏や冬の電力需給を予測するときに「予備率」が3%以上かどうかを重視するのは、こうした理由からである。

図2 電力需要の変動。出典:電力需給検証小委員会

 一方の供給力は電力会社の発電設備の運転状況でおおむね決まる。稼働中の発電所の出力を合計したうえで、他社から融通してもらえる電力などを加えて算出する。でんき予報で表示されているピーク時供給力は、最大電力が発生する時間帯の供給力を表している。

 ここで注意しなくてはならないのは、供給力は「供給可能な電力」の最大値であって、必ずしも実際の供給量ではない。電力は常に需要と供給を一致させる「同時同量」が原則で、1日の供給量の最大値は最大電力と同じになる。そのために電力会社は需要に合わせて火力発電所などの出力を調整してバランスをとっている。

 電力会社は月ごとに最大電力を想定して、あらかじめ十分な供給力を確保しておく。最大電力が大きくなる月は供給力を増やし、小さくなる月には供給力も減らす。関西電力が2013年夏の供給力の想定と実際の最大電力をまとめたグラフを見ると、両者の関係がよくわかる(図3)。

図3 2013年の夏の最大電力(実績)と供給力(想定)。出典:関西電力

 そのうえで日ごとの供給力は細かく変動する。最大電力の予想をもとに火力発電所の出力レベルを抑制することもあれば、水力発電所の出力が水量の減少によって低下することもある。電力が不足する可能性がある場合には、他社から融通する電力を増やして、供給力を引き上げる。最大電力に合わせて、供給力を最適なレベルに調整することも、電力会社の重要な役割になっている。

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