供給力に余裕のある東京電力、すでに厳しい九州電力電力供給サービス

12月に入って全国各地で気温が低下して、電力の需給状況が厳しい地域も出始めている。10日(月)には中部電力で需給率が一時97%に達する状況に陥った。電力会社による事前の予測データを見ると、まだ供給力に余裕があるところ、すでに余裕がなくなっているところがある。

» 2012年12月11日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 この冬の電力需給の見通しに関しては、政府の「需給検証委員会」が12月〜3月の月別・地域別の予測を11月初めにまとめて発表している。その予測データによると、12月の需給状況が最も厳しいのは九州で、需給率が最高で96.9%に達する。次が中部の95.7%、最も余裕があるのは東京の86.2%となっていた。

 実際に中部は10日(月)に予測を上回る需給率を記録したほか、本来は余裕があるはずの東京でも11月の最終週に需給率が97%を超える非常事態に陥っている。今後いっそう寒さが厳しくなることが想定される状況で、北海道以外の地域でも電力不足の心配が生じている。

 なぜこれほど早く当初の予測を上回るような需給状況になってしまったのか。12月3日(月)〜7日(金)の実績値を予測値と比較してみよう(図1)。

 各地域の需要から見てみると、すでに九州は予測に近い水準まで高くなっている。年末に向けて気温が低下していくと、予測を上回る可能性がある。そのほかの地域は、まだ予測値から十分に低いレベルにある。

図1 12月の電力需給の予測と第1週(12月3日〜7日)の実績

 一方の供給力は地域によるバラつきが大きい。東京電力のほか、東北や中部、中国や四国でも予測に対して実際の供給力は低く推移しており、これから増加できる余力が大きいと考えられる。対して九州と関西は、すでに予測を超える供給力を出しており、大幅な上積みは難しい状況だ。

 とはいえ関西は需給率が十分に低いことから、当面は需要が増加しても電力不足の心配はない。問題は九州である。すでに供給力が予測を50万kWも上回っており、今冬の最大供給力である1月の1589万kWまで100万kW程度の余裕しかない。現時点では全国で最も厳しい需給状況にある。今すぐ九州には節電目標を設定すべきだ。

 唯一7%の節電目標が設定されている北海道は、今のところ需給率が9割を切る状態だ。ただし供給力が今冬の最大値に近い水準まで上がっており、今後の気温低下による需要の増加に対応できるかどうかは予断を許さない。

 11月に需給率が97%を超えてしまった東京電力は、12月の供給力には余裕がある。予測と実績の間に1割近い開きがあり、供給力を上積みできる余地は大きい。東北、中国、四国でも供給力に1割前後の余裕がある。九州や北海道で需給状況が厳しくなった時には、緊急で他地域からの融通量を増やす対策も考えられる。

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