「道路へ」太陽電池設置が可能に、佐賀で全国初の取り組み自然エネルギー

佐賀県は有明海沿岸道路の「のり面」を利用した太陽光発電事業者の募集を開始した。道路法施行令の一部改正により、道路に太陽電池を設置できるようになり、この好機をいち早く利用する形だ。

» 2013年10月17日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 佐賀県は国道445号のバイパスである有明海沿岸道路を利用した太陽光発電の事業者を募集する。県の狙いは2013年4月1日に一部改正された道路法施行令をいち早く利用して、太陽光発電の普及につなげることだ。都道府県の管理する道路で、太陽電池を設置する発電事業者を公募するのは今回が全国初だという。

 道路には電柱のように本来の交通とは無関係な構造物が建てられている。道路法施行令の改正により、新たに民間事業者の太陽電池を設置できるようになった。これが背景だ。他の用途に利用が難しい土地を太陽光発電に使おうとする意欲的な試みだといえよう。

 佐賀県が募集するのは有明海沿岸道路の久保田IC付近から福所江大橋までの約2.0kmの区間。既に供用済みの区間だ(図1)。この区間は周囲の土地よりも高い位置を走っており、道路と周囲の間を結ぶ斜面である「のり面」が続いている。「南向きののり面であって、ある程度の面積が確保できるため、この区間を選んだ」(佐賀県)。

図1 太陽光発電事業者を募集する道路の位置。出典:佐賀県

 のり面の面積は約1万m2あり、県の試算によれば約1MWの太陽電池モジュールを設置可能だ。

 佐賀県の募集条件は有利に見える。こののり面は県が用地買収し、国が所有する土地だが、占用料(地代)は不要だ。「今後、占用料の単価改定があった場合も引き続き無料にする方針だ」(佐賀県)。占用料以外にも県への支払い義務はなく、発電量のモニター報告義務なども付いていない。

 不利になりうる条件もある。道路法上占用期間が5年と定められており、県が予定する20年間の保証がないからだ。「更新を最大3回まで認めており、20年間の占用は可能だが、これを保証する文書は出せない。占用の許可の条件と応募資格要件を満たしており、占用に支障がない場合には更新が許可される」(佐賀県)。

 2013年10月30日までに事業者の事前登録を受け付けており、11月25日までに企画書を提出しなければならない。12月中旬に事業者を決定後、2014年4月以降に道路法第32条により、道路占用許可申請を行うというスケジュールだ。

 太陽光に関連した制約が何点か募集要項に記されている。まずは自由な部分だ。固定価格買取制度(FIT)などを利用した売電事業だけではなく、自家消費や実証研究も可能である。制約は主に3つある。まず道路交通者の視界を妨げたり、太陽光を反射する設備は認められていない。次に、基準風速34m/s、垂直積雪量20cmに耐えなければならない。最も難しいのが架台に関する条件だろう。道路ののり面には盛り土の強度を高める補強材(ジオテキスタイル)が使われており、杭形式の架台を使う場合はこの補強材を傷つけない工法でなければならない。

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