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» 2013年11月26日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2013年版(35)山口:本州と九州のあいだで洋上風力、20基の大型風車が未来をひらく

海に囲まれた山口県は洋上風力発電が有望だ。九州に対面する下関市の沖合では着床式による大規模なプロジェクトが開始目前で、実現すれば日本最大の洋上風力発電所になる。陸上には木質バイオマスと石炭の混焼発電が広がり、瀬戸内海の沿岸では工場跡地を活用したメガソーラーの建設も進む。

[石田雅也,スマートジャパン]

 日本の近海で洋上風力発電所の建設計画が続々と始まろうとしている。その中でも最大級のプロジェクトが、本州と九州にはさまれた下関市の沖合で進行中だ(図1)。前田建設工業が2016年4月の稼働を目指して地元の自治体と協議を進めているもので、計画では最大20基の大型風車を設置して60MW(メガワット)の発電能力を発揮する。

maeda_yojo1.jpg 図1 洋上風力発電事業の予定区域。出典:前田建設工業

 山口県の沿岸部は風況に恵まれている。すでに陸上では10か所で風力発電所が稼働中だが、最大でも1カ所で30MWまでである。下関沖の洋上風力は2倍の規模になり、全国を見渡しても陸上・洋上を合わせてトップ3に入る。それだけに実施計画に注目が集まっている。

 風車の設置方式は海底に固定する着床式を採用する(図2)。陸地から3キロメートル以内の海域が対象になるため、水深は15メートル程度と浅い。それでも設置する風車の直径は100メートル以上にのぼり、最高到達点は海面から150メートル以上の高さに達する。この規模の大型風車で1基あたり3〜4MWの発電能力を想定している。

maeda_yojo2.jpg 図2 着床式の洋上風力発電設備。出典:前田建設工業

 風車の配置は3通りのパターンを検討中で、いずれの場合も陸から沖に向けて3列に並べる予定だ。最も数が多い20基を設置する案では、洋上の発電設備をつなぐ送電ケーブルの総距離は12キロメートルに及ぶ(図3)。さらに海岸線から陸上の変電所まで地中ケーブルを埋設して送電する。

maeda_yojo3.jpg 図3 発電設備の設置計画案(20基の場合、画像をクリックすると拡大)。出典:前田建設工業

 発電・送電設備を合わせて総工費は250億円を見込んでいる。環境に対する影響評価を含めて国や地元との調整が済めば、2015年の初めに工事を開始する計画だ。予定通りに60MWの規模で稼働すると、一般家庭で4万世帯に相当する大量の電力を供給できるようになる。

 山口県内には現時点で陸上に大型風車が55基あって、合計すると100MWを超える発電能力になる。県全体の再生可能エネルギーの半分近くを風力発電が占めていて、洋上を加えればいっそうの拡大が期待できる状況にある(図4)。

ranking2013_yamaguchi.jpg 図4 山口県の再生可能エネルギー供給量。出典:千葉大学倉阪研究室、環境エネルギー政策研究所

 風力の次にはバイオマスの取り組みが進んでいる。隣接する島根県や広島県と同様に、中国山地から産出する木質バイオマスを利用した火力発電設備が県内に5カ所ある(図5)。1カ所は木質バイオマスだけを燃料に使った設備で、残る4カ所は石炭と混焼して発電時のCO2排出量を削減する試みを見せる。

 県内で最大の混焼プロジェクトは中国電力の新小野田発電所で実施中だ。年間に3.5万トンの木質バイオマスを使って3500万kWhの電力を作り出すことができる。一般家庭で1万世帯分に相当する。2011年から実証試験を続けてきて、2013年4月に商用運転へ移行した。混焼発電は環境負荷の大きい石炭火力の改善策として有効な手段になる。

biomas.jpg 図5 山口県内の木質バイオマス発電設備。出典:山口県農林水産部

 新小野田発電所が立地する瀬戸内海沿岸の工業地帯では、豊富な日射量を生かしてメガソーラーの建設も相次いで始まっている。代表的な例は、かつて石炭やセメントを主力事業にしていた宇部興産の工場の跡地を活用したプロジェクトである。

 宇部市の宇部港に面した約30万平方メートルの土地に、21MWの大規模なメガソーラーを建設する計画だ(図6)。用地の広さは東京ドーム6個分もある。年間の発電量は2500万kWhを見込み、7000世帯分の電力を供給することができる。2014年7月に稼働する予定で工事が進んでいる。

 日本海から瀬戸内海をめぐる、山口県の長い海岸線を利用した再生可能エネルギーの拡大は、これからも各方面で続いていく。

ube_megasolar.jpg 図6 「ユーエスパワー発電所」の建設予定地。出典:昭和シェル石油、宇部興産

*電子ブックレット「エネルギー列島2013年版 −中国編−」をダウンロード

2015年版(35)山口:「CO2フリーの水素を動物園や市場へ、農山村に小水力発電と竹バイオマス」

2014年版(35)山口:「小水力発電をダムに展開、サイフォン式やバルブ式で水流を生かす」

2012年版(35)山口:「本州の最西端にメガワット級の発電所、風力・太陽光・バイオマスが勢ぞろい」

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