走行中の電車は発電所にもなる、余剰電力で600世帯分を供給蓄電・発電機器

東京都と茨城県を結ぶ新交通システムの「つくばエクスプレス」を使って、12月1日から売電事業が始まった。走行中の列車がブレーキをかけた時に発生する回生電力のうち、他の列車の運行や冷暖房などに利用した後の余剰分を電力会社に販売する。一般家庭で600世帯分に相当する供給量になる。

» 2013年12月03日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 「つくばエクスプレス」の環境配慮型車両。出典:首都圏新都市鉄道

 「つくばエクスプレス」は東京都心と郊外をつなぐ高速鉄道で、60キロメートルの路線を1日あたり約200往復する。全車両に回生ブレーキを搭載して、走行しながら発電できる体制を整えている(図1)。

 列車で発電した電力は他の列車に供給するほか、駅の冷暖房や照明などに利用してきた。列車や駅舎で使用する電力量のうち12〜13%を回生ブレーキによる発電でまかなっている。

 それでも余剰分が出ることから、電力会社に売電することにした。鉄道会社で回生電力を売電するのは公式には初めてのケースとみられる。供給先は東京電力になる。

 回生電力の余剰分は年間に200万kWh程度を見込んでいて、一般家庭で600世帯分の使用量に相当する。つくばエクスプレスを運営する「首都圏新都市鉄道」によると、今後さらに売電量を拡大する計画がある。ただし回生電力は再生可能エネルギーとして認定されていないため、売電価格は不明だ。

 回生ブレーキを搭載した列車はブレーキをかけてから停止するまでのあいだ、走行用のモーターを発電機にして電力を発生することができる。発電した電力は架線を通して変電所に戻してから、走行中の他の列車や駅舎に供給する(図2)。

 つくばエクスプレスの変電所では周波数を安定させるための「PWM(パルス幅変調)変換器」を使っていて、売電する電力も周波数や電圧が一定な高品質の状態で供給することが可能になっている。

図2 列車が減速中の電気の流れ。出典:首都圏新都市鉄道

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