電力損失ゼロの超電導ケーブルで鉄道が走る、5%の節電効果に期待省エネ機器

JRグループで研究開発を担当する鉄道総合技術研究所が世界で初めて、超電導ケーブルを使った鉄道の走行試験に成功した。1500ボルトの電圧で5000アンペア以上の電流を送ることが可能で、実際の路線にも適用できることを確認した。2020年の実用化を目指す。

» 2013年07月26日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 鉄道が使う電力は膨大で、国全体の電力使用量の3%程度を占めると言われている。大量の電力が変電所から送電線を伝わって電車まで届けられる間に、実は5%ほどが失われてしまう。この電力損失をゼロにする夢の技術が「超電導ケーブル」で、JRグループの鉄道総合技術研究所が7月24日に世界で初めて走行試験に成功した。

 試験を実施した場所は、東京都内の研究所の中にある600メートルの試験用の路線である。線路の脇に長さ31メートルの超電導ケーブルを敷設して、2両の車両を走らせた。超電導ケーブルの両端には電流端末と呼ぶ装置が接続されている。その間をマイナス196度の液体窒素を循環させて、電力損失がゼロになる超電導状態を実現した(図1)。

図1 鉄道用の超電導ケーブルシステム。出典:鉄道総合技術研究所

 ケーブルの太さは約10センチメートルで、その中を液体窒素が循環する「対向流循環方式」を採用した点が特徴だ。1本のケーブルで超電導による送電が可能になり、実際の鉄道で使える1500ボルトの電圧で5000アンペア以上の電力を損失ゼロで送ることができる。

 鉄道総合技術研究所は2020年の実用化を目指して、超電導ケーブルの長距離化とシステム全体のコストダウンを進めていく予定だ。さらに太陽光発電システムからの送電にも超電導ケーブルを利用できるようにする計画で、将来は鉄道の沿線に設置した太陽光発電システムと組み合わせた高効率の送電システムを実現する。

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