日本の未来をドイツに見る、東芝が示す太陽光の「完成形」電力供給サービス(1/2 ページ)

太陽光発電では日本が世界最大の市場に成長しつつある。だが、太陽光の魅力を完全に引き出すことはできていない。なぜなら電力が自由化されていないからだ。東芝は電力自由化が進むドイツで電力小売事業に参入。太陽光発電のいわば完成形を見せつける。

» 2013年12月06日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 東芝がサービスを導入するドイツ2都市の位置(黄色)

 大規模なシステムを導入することで、収益を得る。電気料金の値上げに対抗するために家庭の屋根に設置する。集合住宅の屋根貸しビジネスと組み合わせる……。日本国内で現在進んでいる太陽光発電の取り組みだ。

 これが将来の電力自由化と組み合わさると、どのような展望が開けるのか。消費者が得られるメリットとは。事業者の参入機会はどう広がるのか。このような疑問への回答となり得る取り組みを、2014年3月に東芝が始める。太陽光発電の電力小売事業だ。最初の舞台はドイツ南部の2都市だ(図1)。

既に電力料金よりも太陽光の方が割安

 「電力小売事業の参入に当たり、ドイツを選んだ理由は、電力市場が自由化されていること、さらに電気料金が割高なことだ」(東芝)。ドイツの太陽光市場は世界一の規模に達しており、設置コストも低い。既に、太陽光発電によって得た電力の方が、配電事業者の設定した料金よりも安く供給できる。これが新しいビジネスの原動力になる。

 東芝がドイツで始める電力小売事業は2つの点で示唆に富む。まず、電力市場の構造をうまく利用していること、次に、電力小売事業に関係する5つのプレーヤー全てがメリットを得られることだ。5つのプレーヤーとは東芝、東芝インターナショナル・ヨーロッパ社ドイツ支店(TIL)、投資家、不動産会社、住人である(図2)。

 年金基金などの投資家は東芝から太陽光発電システム(ハートウェア)を購入する。東芝と提携したドイツ最大手の不動産関連企業であるGAGFAH(ガグファ)は所有する賃貸アパートの屋根を投資家に貸し出す。ガグファにとっては所有する不動産に付加価値が付くことになる。投資家は屋根に設置したシステムで発電した電力をTILに販売する。TILはアパートの居住者に割安な料金で電力を販売する。

図2 東芝の電力小売事業の全体像。出典:東芝

 TILのビジネスがどのようにうまくいくのか、アパート住人のメリットは何か、東芝は具体的な数字を挙げて説明する。「ドイツは現在のような固定価格買取制度(FIT)を2000年に開始して以来、買取価格を順次引き下げてきた。現在の買取価格は、1kWh当たり0.14ユーロ(14セント)だ。TILは16セントで電力を買い取るため、投資家はFITを利用するよりも、TILに直接売電した方が利幅は大きい」(東芝)。

 アパート住人のメリットも分かりやすい。「ドイツの電力料金は割高だ。地域の配電会社から購入すると1kWh当たり24セントである。TILから購入すると21セントだ」(東芝)。TILは16セントで購入した電力を21セントで販売するため、1kWh当たり5セントの売り上げが立つ。諸経費は掛かるものの、利潤を生むことが可能な水準だという。

 なお、図2で「注1」となっている料金は、2013年10月時点の固定買取価格(システム規模が20kWの場合)、「注2」となっている料金は同時点のオストフィルダン市での電力の価格(税別)だ。同時点では1ユーロは約132円だった。

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