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» 2014年03月07日 15時00分 UPDATE

安全・安心・信頼できる風力発電所(3):第3回:風況・海洋調査データを活用した事業評価方法

欧米では風況・海洋調査で得られたデータを生かして、第三者機関が「マイクロサイティング/サイトアセスメント」と「デューデリジェンス」を実施するのが一般的である。事前に得られたデータを科学的・技術的に解析することにより、発電量の予測と発電所のリスクを把握して事業の最適化を図るための情報を提供する。

[川口昇/UL Japan,スマートジャパン]

第1回:「風力発電の最新動向」

第2回:「風力発電の風況・海洋調査」

「マイクロサイティング/サイトアセスメント」による予測

 風況調査で得られたデータを活用する目的は、「マイクロサイティング/サイトアセスメント」を実施することにある。マイクロサイティング/サイトアセスメントは発電所の所有者などに対して、発電機を効率的かつ適切に配置するための設計情報や、発電能力の評価・解析、発電量予測、リスクに関する情報などを提供する。

 具体的には以下の項目がある。

1.陸上、洋上の風の潜在能力、発電能力の評価と解析

2.測定マストの位置と効果的な測定方法を提供

3.日、年単位での発電量の変化の算出

4.発電量のパラメーターと安定性の評価

5.発電量の最適化の為の風力発電所の最適な設計

6.極限状態の風速の予測

7.発電曲線の不確実性を減らし、安定した発電の為の検証を実施

8.風力発電所の風切音と影の評価

9.その他

 実際のイメージをつかむために、マイクロサイティングの例を示す。図1は山の尾根と谷がある陸上の地形の例で、左が風力発電機の設置計画、右が風況調査のための測定塔の設置例である。さらに図2はサイトアセスメントのデータに基づく効率的な発電機の設置シミュレーションの参考例、そのときの発電量の予測とパワーカーブを示した。

ul_fig3_1_sj.jpg 図1 マイクロサイティングのための測定塔の設置。出典:UL Japan
ul_fig3_2_sj.jpg 図2 発電機の設置シミュレーション(左)、発電量の予測とパワーカーブ(右)。出典:UL Japan

「デューデリジェンス」で資産価値と投資対効果を評価

 風力発電は発電コストが低い点がメリットだが、数多くのリスクを内在している。風況・海洋調査とマイクロサイティング/サイトアセスメントに加えて、技術的な調査・分析を通じてリスクを明確にする必要がある。特に発電量は事業の収益に直接影響を与える重要な指標になる。

 これらの調査・分析情報により発電所の資産価値を客観的な情報をもとに試算することが可能となる。電力会社・開発者・投資家・所有者・運営会社・銀行・保険業者など数多くのステークホルダーが、客観的なデータに基づく第三者による報告書をもとに、より正確に把握することができる。

 投資対効果、資産価値、財務分析、保険料率算出といった、事業評価のための技術的な支援を行うのが「デューデリジェンス」である。さらに発電所を運転した後の備えとして、事故が起きた時の調査・解析、発電量の予測値と実績値が異なった場合の解析や改善のための情報提供まで実施することによって、安全・安心・信頼できる風力発電所の設置に大きく貢献する。

 今後は電力会社や自治体などのほかにも、固定価格買取制度によって個人の事業者までが幅広く風力発電事業に参加することになる。デューデリジェンスを通じた客観的な資産価値と投資対効果を明確にすることが社会から広く望まれている。

 次回は風力発電設備の製品認証について解説しながら、安全・安心・信頼できる風力発電所を実現するための要件をまとめる。

著者プロフィール

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川口 昇(かわぐち のぼる)

UL Japanマーケティング部部長。電機メーカー在職中に通算10年間にわたって欧米の現地法人でマーケティング関連の業務に従事。その後アメリカの安全認証機関ULの日本法人であるUL Japanに勤務し、風力発電など再生可能エネルギー分野の規格開発支援、普及、政府工業会に関する活動を北米本社と連携して行う。


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