なぜ水素をメタンに変えるのか、高効率変化へ一歩前進自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2014年03月11日 12時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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どのような技術が必要なのか

 水素をメタンに変えて扱うには乗り越えなければならない技術的課題がある。短時間で効率良く反応を進め、変換時に使うエネルギーを減らすことだ。

 冒頭の日立造船とアタカ大機、タイPTTEPの成果が、技術的課題に対する1つの解だ。3社は技術共同開発・調査において、3つの実験、検討を進めたという。まず、適正な結着材を用いたメタン触媒、次に反応速度、最後に二酸化炭素を1000m3/時(標準状態)という速度でメタンに転換する反応器設備だ*3)

 技術開発の成果は、3つあり、1つが純度、もう1つが200度で反応が可能になったこと、最後に反応管の長さを5mに抑えたことだ。小型の容器で、変換時に低いエネルギー(温度)で反応を進め、変換効率を高めることができたといえる。

 経済産業省の「平成25年度再生可能エネルギー貯蔵・輸送等技術開発」プロジェクトでは、2013年7月に日立造船が低コスト水素製造システムの研究開発の委託先として選ばれている。アタカ大機は同エネルギーキャリアシステム研究の委託先だ(図1)。「水素のメタン化を含め、当社がどの程度の範囲を事業化するか、まだ公表の段階ではない。水素エネルギー普及と二酸化炭素削減のため技術開発を続けていく」(日立造船)。

 3社の共同開発は、2014年3月時点で成果を挙げ、フェイズ1が完了した形だという。「フェイズ2の開始時期は未定だ。フェイズ2の開発期間は約3年になるのではないか。フェイズ1の成果の課題を抽出し、反応装置の大型化を試みることが技術開発目標だ」(日立造船)。

*3) 二酸化炭素のメタン化技術は、東北大学・東北工業大学の名誉教授である橋本功二氏がアタカ大機と共同で開発を進めてきたもの。水電解により水素を得ること、水素製造時の電極やメタン変換時に必要な触媒に貴金属やレアアースを使わないことが特徴だ。

図1 再生可能エネルギー貯蔵・輸送等技術開発の範囲 出典:経済産業省

 なお、水素を扱いやすいメタンの形に変換して利用するための技術開発は、ドイツでも進んでいる。ドイツでは「Power-to-Gas」技術と呼ばれている。例えば、自動車メーカーのドイツAudi(アウディ)は、水を電気分解して得た水素を二酸化炭素と反応させ、メタンを生成する事業「e-gas」を2013年6月に開始している。水の電気分解には風力発電の電力を利用している。

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