なぜ水素をメタンに変えるのか、高効率変化へ一歩前進自然エネルギー(1/2 ページ)

日立造船など3社は、低コストで水素をメタンに変換する技術の開発に成功した。邪魔者の二酸化炭素を利用し、比較的扱いにくい水素を、既存のインフラで利用可能なメタンに変える試みの1つだ。

» 2014年03月11日 12時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 2014年3月、日立造船は水素と二酸化炭素から純度99%のメタンを作り出す技術開発に成功したと発表した。従来技術では純度90%が上限だった。

 同社は2012年1月から、グループ企業のアタカ大機*1)と共同で、タイの石油・天然ガス採掘企業であるPTTEPと二酸化炭素のメタン転換技術の開発を続けてきた。実用化可能性調査を兼ねた開発であり、目的は天然ガス採掘時にガス田から放出される二酸化炭素をメタンに転換することだ。転換に必要なエネルギーは風力発電などの再生可能エネルギーでまかなう。

*1) 日立造船は2014年4月にアタカ大機を吸収合併する。

なぜ水素からメタンを作るのか

 化石燃料をあまり使わず、二酸化炭素(CO2)の排出量も削減する。このようなエネルギー社会を実現する手法は複数ある。

 1つは再生可能エネルギーと「水素」を組み合わせる手法だ。まず、太陽光や風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーで電力を生み出す。ある時点で使い切れなかった電力を水素に変え、必要に応じて燃料電池車や、発電用の燃料電池に受け渡す。こうして、電力の需要と供給のバランスを取り、二酸化炭素の排出を減らすことができる。太陽光発電などを用いた大量の発電が可能な国から、水素の形でエネルギーを国内に運び込んでもよいだろう。

 この手法に対する批判もある。水素を大量に製造、輸送、蓄積することは技術的に可能だ。研究開発も進んでいる。しかし、新たに立ち上げなければならない水素インフラのコストが大きくなりすぎるという批判だ。

 水素を大量に製造しながら、既存のインフラをそのまま使い続ける方法が水素の「メタン化」だ。水素と邪魔者の二酸化炭素を反応させてメタンを作り出す技術を使う*2)。次のような反応だ。二酸化炭素と水素から、メタンと水ができる。

CO2+4H2→CH4+2H2O

 メタンは天然ガスや都市ガスの9割程度を占める可燃性ガスであり、海上を含む長距離輸送(液化天然ガス)や国内での貯蔵、需要地への供給インフラが整っている。メタンは水素と比較すると格段に扱いやすい。

*2) 水素のメタン化に二酸化炭素を使ったとしても、二酸化炭素の排出量を削減したことにはならない。ここでは二酸化炭素がエネルギー輸送用の「梱包材」として役立っている形だ。

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