東京電力はどこまで変わるか、改革意欲を示す3カ年計画電力供給サービス(1/2 ページ)

2016年からの小売全面自由化に向けて、東京電力が3カ年のアクション・プランをまとめた。燃料費を削減するための新しい事業体を2014年度中に設立するなど、発電・送配電・小売の3事業分野ごとに意欲的な実行項目を掲げている。電力会社の先頭を切って進める改革の成果に期待がかかる。

» 2014年04月02日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 東京電力の「2014年度アクション・プラン」は2つの大きな柱で構成している。1つは福島の復興を中心にした原子力事業の再構築であり、もう1つは小売全面自由化と発送電分離に向けた競争力の強化である。まさに現在の事業環境を反映した内容で、計画通りに推進できれば東京電力は新しい形のエネルギー供給会社に変わる。

 このアクション・プランには2016年度までの3年間に実行する重点項目が示されている。3年目の2016年度には発電・送配電・小売の3事業会社を分離・独立させる計画で、政府が2018年にも実施する予定の「発送電分離」を2年も先取りして新体制を作り上げる(図1)。

図1 東京電力の組織改革案。出典:東京電力

 すでに2013年4月から社内カンパニー制を導入して、火力発電・送配電・小売の各カンパニーを設立して改革の準備を始めている。アクション・プランには3つの事業分野の収益改善と競争力強化の施策を数多く盛り込んだ。電力会社にとって最大の課題は「総括原価方式と地域独占体制からの脱却に全力で取り組むこと」(數土文夫会長)であり、その意欲を具体的な計画で示した。

火力発電のサプライチェーンを変える

 発電事業の中核になる火力発電では2つの重点課題がある。燃料費の削減と供給力の安定確保だ。燃料費を削減するために、調達の上流工程を含めてサプライチェーンを大きく変えていく。その役割を担うのは他社と共同で設立する「包括的アライアンス事業体」である(図2)。

図2 「包括的アライアンス事業体」による燃料費削減。出典:東京電力

 新しい事業体を2014年度中に設立したうえで、2015年度から共同調達に着手する。燃料調達の上流に参画するためのプロジェクトを2015年度と2016年度に1件ずつ決定することが目標だ。すでに中部電力と大阪ガスが米国でシェールガスの調達プロジェクトを進めている。東京電力も同様の取り組みを通じて、今後の火力発電に欠かせないLNG(液化天然ガス)を安く調達する。

 火力発電のサプライチェーンを改革することによって、燃料費を削減するだけではなく、他社にも供給するなどして周辺事業を拡大していく方針だ。燃料費の削減と周辺事業の利益を合わせて、年間に800億円の収益改善を目指す。

高効率の火力発電所を前倒しで運転開始

 もう1つの課題である供給力の安定確保では、熱効率の高いLNG火力発電設備の増強を急ぐ(図3)。試運転中の千葉火力発電所3号系列(150万kW)と鹿島火力発電所7号系列(125万kW)の合計6基を2014年7月までに営業運転へ移行して、夏の電力需要に対応する。

図3 主要な電源開発計画(運転開始年月は平成で表記)。出典:東京電力

 さらに国内最高水準の熱効率61%を発揮する川崎火力発電所2号系列(142万kW)の試運転を前倒しすることも決めた。2基のうち1基は2016年7月に、もう1基は2017年7月に営業運転を開始する予定である。

 自社の発電設備の増強と並行して、他社からの調達も拡大する。2014年度中に新設する包括的アライアンス事業体を通じて、競争入札による火力電源の調達を推進する計画だ。これに合わせて熱効率の低い老朽化した火力発電所の設備更新も進めていく。

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