津波と地盤沈下を被った宮城、28MWの太陽光で再生へ自然エネルギー

丸紅は仙台空港近隣の岩沼市で出力28.4MWのメガソーラーを着工したと発表した。東北地方に立地する太陽光発電所としては最大級となる。総事業費は70億円だ。着工に至るまでの準備段階に2年弱を要した。

» 2014年04月11日 14時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 宮城県岩沼町と発電所の位置

 丸紅は2014年4月10日、東北地方では最大級となる「いわぬま臨空メガソーラー」(出力28.4MW、図1、図2)の建設を開始したと発表した。

 総事業費は70億円。1MW当たりの事業費は約2億5000万円である。全額を自己資金でまかなう。日立製作所が設計・調達・建設(EPC)を請負い、海外企業の太陽電池モジュールを設置、2015年4月の送電開始を予定する。丸紅が全額を出資したいわぬま臨空メガソーラーが運営会社となる。

 想定年間発電量は約2900万kWh。これは一般世帯の年間消費電力量に換算すると、約8000世帯分だ。岩沼市の全世帯の5割以上に相当する。固定価格買取制度(FIT)を利用して東北電力に20年間、全量を売電。2012年の買取価格(40円、税別)が適用されるため、売電収入は年間11億6000万円となる見込みだ。

図2 東の上空から眺めた「いわぬま臨空メガソーラー」の完成予想図 出典:丸紅

事業開始に手間取る

 太平洋に面した岩沼市は2011年3月11日に発生した東日本大震災で大きな津波の被害を受けた。宮城県によれば市域の約48%が浸水被害を受けている。市の中央やや東よりには常磐自動車道が南北に走り、この道路よりも海側はほぼ全て浸水した。岩沼市と宮城県名取市にまたがる仙台空港もこの地域に立地する。

 いわぬま臨空メガソーラーは仙台空港から南に1.5kmしか離れていない。もともとは農地だったが海水をかぶり、震災後には地盤も沈下した。2011年11月に国土地理院が発表したデジタル標高地形図によれば、建設予定地の大半が標高1m未満。0m未満の部分も点在する。

 農地としての利用が難しいと判断した岩沼市は、今回の予定地を含む同市相野釜西地区の約57.5haをメガソーラーとして活用することを決定、2012年5月に発電事業者を公募型プロポーザル方式で募集、同6月には丸紅が選ばれた。市の計画では同11月には事業に着手する計画だった。今回の買取価格が2012年の金額になっているのもこのためだ。

 ところが、2つの理由により着工に至らなかった。第1の理由は地権者との土地賃貸借契約の締結だ。最終的に賃貸借契約に至った43.6haの土地のうち、40haが公有地ではなく一般の地権者の所有地だった。第2が農地転用手続きだ。用地は震災前、全て農地として使われており、震災が原因となって農耕ができなくなった場合でも手続きには時間がかかった。

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