海洋エネルギー:潮・波・海水でも発電、2050年には2200万世帯分にも再生可能エネルギーの未来予測(7)(1/3 ページ)

現在のところ実現性は未知数ながら、将来に大きな可能性を秘めているのが海洋エネルギーだ。発電に利用できる主なものは潮流・波力・温度差の3種類。すべての導入可能量を合わせると一般家庭で2200万世帯分の電力になる。最大の課題は発電コストで、20円台まで下がれば普及に弾みがつく。

» 2014年04月17日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第6回:「バイオマス発電:使わずに捨てる資源から、800万世帯分の電力」

 周囲を海に囲まれている日本は海洋エネルギーの宝庫でもある。その活用方法は洋上の風力発電が代表的だが、ほかにも潮の流れや波の振動、さらには海洋深層水を利用した温度差発電の可能性が大きく広がっている。

 すでに欧米の先進国では潮流発電と波力発電の開発プロジェクトが数多く進行中だ。まだ発電規模はさほど大きくないが、2035年には全世界で14GW(ギガワット)の導入量に拡大して、地熱発電の3分の1に達することが見込まれている(図1)。

図1 全世界の再生可能エネルギー導入量の予測(単位:GW)。出典:NEDO(IEAの資料をもとに作成)

九州・沖縄で実証試験が始まる

 日本国内でも海洋エネルギーが豊富に存在する九州・沖縄を中心に、本格的な実証試験が始まりつつある。中でも世界をリードする先進的な取り組みとして注目を集めるのが、沖縄の久米島で実施中の海洋温度差発電である(図2)。

 久米島の近海で水深700メートルの海中から低温の海洋深層水をくみ上げて、海面近くにある高温の海水との温度差を利用して発電することができる。現在は50kWの発電能力にとどまるが、今後は1〜2MW(メガワット)級の商用設備を実用化する計画だ。成功すれば沖縄から南九州の全域に展開できる可能性が開けてくる。

図2 沖縄県久米島で稼働中の海洋温度差発電の実証設備。出典:沖縄県商工労働部

 佐賀県の呼子町の沖合では、潮流発電の実証試験の準備が進んでいる。海上に発電設備を浮かべて、風力で1MWを発電しながら潮流でも50kWの電力を作り出す、日本で初めての試みだ(図3)。呼子町のほかにも長崎県の五島列島や兵庫県の淡路島の周辺に潮流発電の有望な候補地がある。

図3 佐賀県呼子町の沖合に設置する予定の潮流+風力発電設備の外観。出典:三井海洋開発

 さらに波力発電の開発プロジェクトも、新潟県の粟島や静岡県の御前崎などで計画中だ。当面は政府や自治体が中心になって、潮流・波力・海洋温度差を利用した実証試験を推進していくことになる。発電量が拡大するのは2020年代に入ってからである。

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