火力発電所の増強を急ぐ東京電力が、ガスを燃料に使う最新鋭の発電設備で営業運転を開始した。「千葉火力発電所」の1基をコンバインドサイクル方式に更新して、発電能力を従来の33万kWから50万kWへ高めた。さらに同じ規模で試運転中の2基も7月までに営業運転に入る。
東京湾岸にある「千葉火力発電所」は合計11基の発電設備で388万kWの電力を供給してきた。東京電力の供給力の7%を担う主力発電所の1つだが、既存の設備を増強して50万kWを追加する。震災後の2012年7月に緊急で設置した「3号系列」の3基を対象に、1基あたり33万4000kWだった発電能力を50万kWへ引き上げる計画だ。
増強する3基の発電設備のうち「第1軸」が4月24日に営業運転を開始した(図1)。このほかに「第2軸」と「第3軸」も試運転中で、6月と7月に営業運転へ移行する予定になっている。夏の電力需要が増加するタイミングに合わせて、供給力を1%近く高めることができる。
従来はLNG(液化天然ガス)を燃料にガスタービン発電機を単独で運転していた。新たにガス燃焼時の排熱を回収して蒸気タービンでも発電できるように設備を更新して、発電能力を1.5倍に引き上げる。最近のガス火力発電で主流になっているコンバインドサイクル方式である(図2)。
東京電力は1980年代から長年かけて、LNGを燃料に使える火力発電設備の増強をコンバインドサイクル方式で進めてきた(図3)。千葉火力発電所の3号系列では最新鋭の「MACC(More Advanced Combined Cycle)」を採用して、熱エネルギーを電気エネルギーに変換できる効率が約58%になる。従来のガスタービン単独の場合には39%にとどまっていた。
さらに発電効率を60%以上に向上させる「MACC II」も開発済みで、同じ東京湾岸に立地する「川崎火力発電所」の構内に2基を建設中だ。1基あたりの出力は71万kWに達する。2016年7月と2017年7月に営業運転を開始する予定である。
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