気温40度でも問題なし、アラブの砂漠にエネルギー都市スマートシティ(2/4 ページ)

» 2014年06月04日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

さまざまな再生可能エネルギー技術を利用

 マスダールシティに組み込まれる技術はゼロカーボン以外に大きく6つに分かれる。スマートビル、グリーンサプライチェーン、新交通、ICT、高効率照明、熱エネルギー利用だ。このうち、ゼロカーボンとスマートビル、新交通について成果を紹介しよう。

 ゼロカーボンを実現するために利用する技術は太陽光発電と集光型太陽熱発電(CSP)、太陽熱利用、二酸化炭素の回収・貯蔵(CCS、関連記事)、地熱システムだ。エネルギー源のうち、53%を太陽光発電、26%を集光型太陽熱発電、14%を太陽熱利用で得る。

 太陽光発電システムは順調に稼働しており、2014年3月時点の規模は出力10MW。5MWを米FirstSolarのCdTe薄膜太陽電池で、残り5MWを中国Suntech Powerの単結晶シリコン太陽電池で得ている。低緯度であり、日照条件が良いため、年間発電量は1750万kWhに達する。日本に設置した場合の平均的な発電量と比較すると1.7倍も多い。

 太陽熱発電所「Shams 1」は2013年3月に完成している(図3)。マスダールシティから南西に約120km離れた砂漠の土地(2.5km2)を使い、出力は100MWと大きい。雨どいのような放物面鏡の前に長いパイプを置き、パイプ中の油を熱し、タービンを回して発電する(関連記事)。

図3 集光型太陽熱発電所Shams 1 出典:アブダビMasdar

 3本の柱で凸面鏡を支え、その周囲に平面鏡を大量に配置するビームダウン型太陽熱発電施設の建設も進んでいる。現時点では出力が100kWと小さいものの、規模拡大がたやすい設計になっているという。

 エネルギー三本柱の最後にある太陽熱利用は、このような発電所とは大きく異なる技術を用いる。給湯に太陽熱を使う技術だ。真空の管の中にヒートパイプを封入した太陽熱温水器(ETC:Evacuated Thermal Collector)である(関連記事)。この技術は日本国内でも大量に導入されている。

 CCSでは技術研究から実用の段階に移行中だ。天然ガスと石油の燃焼ガスから二酸化炭素を分離、回収し、地下の油層に送り込む「ESI Carbon Capture Facility」計画は、2015年に運転を開始し、2016年に最大能力に到達する。これは2014年2月時点の予定だ。

 CCS技術を油田と組み合わせると、面白い現象が起きる。二酸化炭素を蓄積できることは当然ながら、老朽油田が再生し、再び石油を産出できるようになるのだ(増進回収法:EOR)。

 マスダールシティで計画されている地熱システムは、いわゆる地熱発電とは異なる技術だ。約2500mの深さの井戸を掘り、100度前後の温水を循環させて熱吸収冷却装置に通じ、冷房などに使う。発電には使わない。日本でいう地中熱利用に近い。

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