1分ごとに上手く冷やす「あべのハルカス」、コストとCO2削減がカギエネルギー管理

日立製作所は複数の熱源設備に対する最適化制御システムを「あべのハルカス」に納入した。エネルギー単価や二酸化炭素排出量を常に最小に保つことが目的だ。前回のエネルギー管理システムの紹介に続き、今回は最適化制御システムについて紹介する。

» 2014年07月15日 13時10分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 2014年3月に全面開業した高さ300mの超高層ビル「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区)。エネルギー管理システムを紹介した前回に続いて、今回はどのように冷熱源を扱っているかを紹介する*1)

*1) 「OKIが納入した『A-EMS』と当社のシステムは並列動作の関係にある。A-EMSは当社のシステムの情報を取得することができ、当社のシステムは省エネ制御を内部で実行している」(日立製作所)。「日立製作所のシステムはA-EMSからはサブシステムとして見えている」(OKI)。

複数の冷熱源をどう使う

 あべのハルカスのような巨大ビルではテナントが利用する熱(冷熱)を供給するために、さまざまな種類や規模の装置を複数動かしている(図1)。安定性と柔軟性を考慮して、電気式の装置とガス式の装置を併用した形だ。

図1 熱源設備の最適化システムの概念図 出典:日立製作所

 これを制御しているのが、日立製作所が納入した「OH Saver」だ。同社によればOH Saverには複数の装置をシステムとして最適制御することにより、空調(冷房)に必要な一次エネルギーを20%減らす能力があるという。

 制御が必要な理由はこうだ。装置によって、冷熱を作り出すために必要な費用(単価)が異なる他、排出する二酸化炭素(CO2)の量も違うことが1つ。もう1つは複数の装置を組み合わせて最適な結果を得なければならないことだ。

 同社によれば、最適制御の動作は以下のようなものだという。例えば冷房のために使う冷水の温度の設定だ。冷水温度を高く設定すると、冷水を作り出す冷凍機が消費するエネルギーは減る。しかし、冷房能力を維持するためには、冷水の流量や冷風量を増やす必要があり、こうなるとポンプやファンの動力が増加してしまう。それぞれの装置の消費エネルギーを合計した値が最小になる組み合わせを素早く演算し、この値になるように機器を制御する必要がある。二酸化炭素の排出量についても同様の動作が必要だ(図2)。

 熱源設備から稼働情報をリアルタイムに収集、演算することで動作する。「制御間隔は1分と短い」(日立製作所)。時々刻々と変わる空調負荷に応じて、最適な制御目標値を演算し、熱源設備に自動指示することで、あべのハルカスの二酸化炭素排出量削減目標である年間5000トン削減に役立つとした。

図2 最適化制御システムの動作イメージ 出典:日立製作所

 日立製作所は最適化制御システムOH Saverと合わせて、見える化システム「Enewatcher」も納入した。熱源用の電気とガスの利用量の他、熱源設備の熱量や温度、流量などのデータを見える化する。OH Saverの動作による最適化制御に加えて、各種の重要経営指標(KPI:Key Performance Indicator)に基づいた運転計画が可能になるという。

 Enewatcherのデータにアクセスできるのは施設管理関係者に限られる。あべのハルカス内の専用ネットワークに接続したPC上で、Webブラウザを用いてグラフ表示などが可能だ。

 なお、日立製作所は今回の熱源設備の最適化制御システムを、開発中の統合エネルギー・設備マネジメントサービス「EMilia(エミリア)」の一機能として組み込む。2014年10月に販売開始を予定する。

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