日本のエネルギー効率は高い?低い? 英国と同程度エネルギー管理

非営利組織である米エネルギー効率経済協議会(ACEEE)は2017年7月、世界の主要16カ国を対象としたエネルギー効率ランキング第2版を発表した。各国の政策と、エネルギー効率の実績を総合的に評価したものである。日本は輸送部門の実績が優れているものの、それ以外に課題がある。

» 2014年07月25日 16時40分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 非営利組織である米エネルギー効率経済協議会(ACEEE:American Council for an Energy-Efficient Economy)は、2017年7月、世界の主要16カ国*1)を対象としたエネルギー効率ランキング第2版(2014 International Energy Efficiency Scorecard)を発表した(図1)。それぞれ国の政策と、エネルギー効率の実績を総合的に評価したランキングだ。各国の現状に将来性を重ね合わせて評価した指標といえる。

 結果は1位がドイツ、2位がイタリア、3位が欧州連合となった。4位は中国とフランス、日本は英国と並んで6位。

 熱利用など各種のエネルギー利用の効率化において、ドイツは既に日本を上回る成果を挙げている。後ほど紹介するACEEEの評価によれば、日本とドイツの政策には得点上の差がない。つまり、今後もドイツに追い付くことは難しい。逆に政策に優れる中国に追い付かれる可能性があるだろう。

*1) 選ばれた16カ国の消費エネルギー量は全世界の71%(GNPの81%以上)を占めている。対象国はイタリアとインド、英国、オーストラリア、カナダ、韓国、スペイン、中国、ドイツ、日本、フランス、ブラジル、米国、メキシコ、ロシア。この他、EU(欧州連合)を1つの「国」として評価した

図1 地図に示したエネルギー効率ランキング(クリックで拡大) 出典:ACEEEの資料を一部編集

日本が弱いのは建物の性能

 ACEEEの評価ポイントは大きく2つに分かれる。政策評価基準は国全体としての具体的な政策目標や法制度を見るもの。国全体の省エネルギー目標や機器などの効率目標が対象だ。もう1つはパフォーマンス評価基準だ。3つの部門、すなわち建物部門と産業部門、輸送部門のエネルギー効率の現状を評価したものだ。実際に使われている乗用車の燃費や住居の面積当たりのエネルギー消費量などを評価した。

 国ごとの順位は以上の政策評価基準と3つのパフォーマンス評価基準に含まれる31の評価値を足し合わせた結果だ(図2)。図2では政策評価基準の点数をオレンジ色、建物部門を青色、産業部門を緑色、輸送部門を黄色で示している。4つの評価ポイントごとに25点を与えており、満点なら100点(横軸)となる。1位のドイツは65点だった。

図2 4つの評価ポイントごとの各国の得点(クリックで拡大) 出典:ACEEEの資料を一部編集

 図2を見ると日本が優れているのは輸送部門(黄色)の実績であり、劣っているのは建物(青色)の実績だと分かる。

 国全体の制度(オレンジ色)から見ていこう。優れているのはイタリア、EU、中国(同数1位)。日本はドイツと並び同数5位だ。イタリアや中国の制度を研究し、必要であれば一部導入する必要がある。

 建物(青色)では1位がフランス、2位がドイツ、3位が同数でEU、中国、カナダである。日本はイタリア、メキシコと並んで同数10位にすぎない。ゼロエネルギービル(ZEB)の政策目標は存在しており、研究開発も進んでいるものの、既に使われている建物の性能が悪いことが分かる。中古の建物のエネルギー効率を高める必要がある。

輸送部門以外が厳しい

 産業部門(緑色)では1位がドイツ、同数2位がイタリアとEU、4位がフランス。日本は中国、スペイン、韓国と並んで同数5位だ。日本の産業部門はエネルギー効率が高いと一般に評価されているものの、実際には対策が不足していることが分かる。例えば熱の効率的な利用だ。輸送部門(黄色)は1位がイタリア、2位がインド、日本は英国と並んで同率3位だった。イタリアやインドには優れた技術が存在する可能性ありだ。

 ここまで米国の話題が一切登場しなかった。米国は総合順位で13位に位置するからだ。建物の性能は日本を上回っているものの、それ以外は見劣りがする。中国と並んで全世界の一次エネルギーの約2割を消費している国としては、エネルギーの効率的な利用について努力が不足しているといえるだろう。

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